Bitcoinで、非金融データの記録を制限する改善提案「BIP-110」をめぐる議論が急速に広がっている。発動期限が近づくなか、提案の是非に加え、導入手順の妥当性をめぐる対立も表面化しており、一部ではチェーン分岐の可能性も取り沙汰されている。
ブロックチェーンメディアのCryptoSlateは11日(現地時間)、BIP-110が、取引に含められる非金融データの量を制限する新たなコンセンサスルールの導入を提案していると報じた。OrdinalsやRunesのように、テキストや画像、トークン関連データをBitcoinのベースレイヤーに記録する利用形態を、事実上抑制する措置と受け止められている。
賛成派は、BIP-110はBitcoin本来の用途を守るための提案だと主張する。非金融データがブロックスペースを過度に圧迫し、ノード運用コストを押し上げることで、決済ネットワークとしての機能を損ねているという立場だ。
Bitcoinアナリストのルイス・マルカノは、BIP-110を適用したノードが大容量のインスクリプションを含むブロックを拒否するようになれば、最終的には経済的な支持を集めるチェーンへハッシュパワーが移る可能性があると指摘した。
これに対し反対派は、ルール変更そのものよりも、導入の進め方に強い懸念を示している。Bitcoinの主要アップグレードは通常、幅広いマイナーの合意を前提に進められるが、BIP-110では比較的低い55%のシグナル要件が採用されている。十分なマイナー支持がないまま、ノード側で強制的に適用する案が含まれている点も論争を呼んでいる。
こうした事情から、ネットワーク分裂の可能性を指摘する声も出ている。Bitcoin開発者でBlockstreamのCEOを務めるアダム・バックは、BIP-110は技術的に不十分なうえ、経済的な合意を欠いたままルールを押し通せば、少数派チェーンが分岐する可能性が高いと警告した。
バックは、2017年のSegWit導入時と単純に比較することにも否定的な見方を示した。当時は開発者、マイナー、関連インフラ事業者の間で幅広い合意が形成されていたが、今回は同水準の支持が見られないとしている。
Bitcoin開発者でセキュリティ専門家のジェイムソン・ロップも批判的な立場だ。スパム対策を名目にした過剰な対応だとして、一部ウォレット機能の不具合や資金移動上の問題を招く可能性があると主張した。別の取引フィールドを使ってデータを記録すれば規制を回避できるため、実効性も限定的だと指摘している。
議論は技術論にとどまらず、Bitcoinの中核的な価値とされる「中立性」にも及んでいる。反対派は、手数料を支払った有効な取引であれば、その内容にかかわらず処理するという原則が損なわれかねないと懸念する。特定の取引だけを遮断する前例ができれば、将来的にプライバシー重視の取引や政治的にセンシティブな取引へと、検閲の対象が広がる可能性があるという。
一方、賛成派は、BIP-110が約1年間に限って適用される時限措置として設計されている点を強調する。ただ、反対派は、むしろ一時的なルール変更の方が、法人向けウォレットや暗号資産インフラ事業者に混乱をもたらすと反論している。
市場では現時点で、Bitcoinの主要チェーンが実際に分岐する可能性は高くないとの見方が優勢だ。暗号資産取引所Bitfinexの分析チームは、今回の事案について「チェーン分岐の脅威」というより、「Bitcoinガバナンスのストレステスト」に近いと評価した。BIP-110を支持するノードの比率がなお限定的で、主要マイニングプールも慎重姿勢を崩していないことを根拠に挙げている。
もっとも、市場参加者の関心は、発動期限が近づくにつれて取引所やカストディアンなどインフラ事業者の対応にも向かっている。一部ノードが別チェーンを維持した場合、中央集権型取引所がリプレイ攻撃の防止やチェーンの安定性確認のために、入出金を一時停止する可能性があるためだ。
業界では、BIP-110が直ちにBitcoinの経済的地位を揺るがす可能性は低いとの見方がある一方で、Bitcoinエコシステムの意思決定構造とガバナンスのあり方を問う重要な事例になるとの受け止めが広がっている。