Stellar Development Foundation(SDF)は、Stellar(XLM)ネットワークの量子耐性移行計画「QPP」を公表し、2027年末までに全アカウントを量子耐性署名方式へ移行する方針を明らかにした。既存のアドレスと取引履歴は維持したまま、署名鍵のみを切り替えられる設計を採る。
ブロックチェーンメディアのCoinpostが現地時間11日に報じた。今回の計画では、量子コンピュータ時代を見据え、ネットワークの継続性を保ちながら段階的に移行を進める点を重視した。
SDFは、Stellarが直面し得る量子コンピュータ関連の脅威を大きく2つに整理している。1つは、検証者が利用するEd25519署名が偽造された場合、合意プロトコル「SCP」が脅かされるリスク。もう1つは、アカウントの乗っ取りだ。
Stellarはアカウントアドレスと署名鍵を分離した構造を採用している。一方で、公開鍵が露出する設計であるため、量子コンピュータがショアのアルゴリズムによって秘密鍵を導出できる段階に達すれば、ネットワーク全体のアカウントが攻撃対象になり得るとみられている。
SDFはこのうち、より難度が高い課題としてアカウント乗っ取り対策を挙げた。検証者に関するリスクは、数百規模の検証者セットを対象にプロトコル更新を進めることで対応可能だが、アカウント移行はエコシステム全体の参加が前提になるためだ。
もっともStellarでは、アドレスと署名鍵が分離しているため、従来型ブロックチェーンとは異なり、既存アドレスや過去の取引履歴を維持したまま、署名鍵だけを量子耐性方式へ切り替えられるとしている。
導入は2026年から3段階で進める。第1段階となる2026年には、スマートコントラクトプラットフォーム「Soroban」に量子耐性署名の検証機能を標準ホスト機能として追加する。
この段階では、米国立標準技術研究所(NIST)が標準化したML-DSA-44とML-DSA-65をサポートする。企業向けウォレットも同年中の対応を見込む。
第2段階の2027年には、プロトコルレベルで量子耐性署名方式を正式に導入する。既存アカウントは「set_options」により、従来のEd25519に量子耐性署名者を追加できるため、新規アカウントの作成や残高移動は不要としている。
2028年以降は、Ed25519署名の非推奨化と廃止を検討する。ただ、実施時期は量子コンピュータ技術の進展とエコシステム側の準備状況を見極めた上で判断する。
残る論点は休眠アカウントの扱いだ。SDFは最終段階で、休眠アカウントの処理を巡るコミュニティでの議論が避けられないとの見方を示した。
既存の署名方式を完全に無効化した場合、該当アカウントの資産を事実上凍結するのか、それとも別途の救済策や復旧手段を設けるのかを判断する必要があるためで、設計上の重要論点として提示した。
SDFは、量子コンピュータが現在多くのブロックチェーンで使われる楕円曲線暗号を破るのは避けられず、問題は可能性の有無ではなく、その時期だと説明している。
さらに、2024年にはNISTが初の量子耐性暗号(PQC)の移行標準を整備したほか、米国のCNSA 2.0や欧州のDORAでも金融インフラの移行スケジュールが示されているとした。
SDFは今回の計画について、単なる機能追加ではなく、ネットワーク運用の在り方を長期的に見直す取り組みだと位置付ける。危機が表面化してから対応するのではなく、今の段階から準備を進めることで、計画的かつ安全な移行が可能になるとしている。
Stellarのエコシステムは今後、2026年のインフラ導入、2027年のアカウント移行、そして2028年以降の既存署名体系の整理へと進む長期の移行プロセスに入る。