FIFAは12日に開幕する2026 FIFAワールドカップで、審判の視点を映し出す「レフリーカム(Referee Body Camera)」を全104試合に導入した。ワールドカップでの本格採用は初めて。開幕戦では、ブラジル出身の主審ウィルトン・サンパイオが装着したヘッドセット型カメラにも注目が集まった。
レフリーカムは、審判のヘッドセットに取り付ける小型カメラで、審判視点の映像をライブ中継やリプレーで活用する。FIFAの公式技術パートナーを務めるLenovoによると、AIベースのリアルタイム手ぶれ補正ソフトウェアを適用し、モーションブラーを最大50%抑えたという。
映像は1080iで伝送する。Lenovoはダラスの国際放送センター(IBC)にサーバーを設置し、映像処理を支援するほか、専用5Gネットワークを通じて送出する体制を整えた。
レフリーカムは、1試合あたり45台に上る既存の中継カメラを補完する新たな視点として運用する。PKやハンド、オフサイドなど判定が争点になりやすい場面で、審判が実際に何を見ていたのかを視聴者に伝えられることから、VAR時代の中継手法を変える技術として注目されている。
一方でFIFAは、この映像をメディアパートナー向けの標準フィードには含めず、別途のガイドラインに沿って運用するとしている。
同技術は、2025年のFIFAクラブワールドカップで試験運用された。その後、2025~26シーズンのブンデスリーガなど主要リーグにも展開された。ブンデスリーガでは、レフリーカムのクリップが週末ごとに約200万回再生を記録し、ファンの反応を確認したという。
FIFA審判委員会のピエルルイジ・コッリーナ委員長は、クラブワールドカップでの試験運用後に「期待以上だった。視聴者から素晴らしい反応を得た」とコメントした。FIFA事務総長のマティアス・グラフストロム氏も、「審判視点の映像は判定の透明性を高め、ファンを意思決定の過程により近づける」と強調した。
レフリーカムは2013年のMLSオールスター戦で初めて導入され、EPLでは2024年に審判のジャレッド・ジレットが初めて着用した。国際サッカー評議会(IFAB)は今年2月、ウェールズで開いた第140回年次総会で競技規則第5条(審判)を改正し、公式大会でのレフリーカム使用を選択肢として承認した。これにより、ワールドカップでの全面導入が可能になった。