フィジカルAI企業のRLWRLDは6月12日、独自開発のロボティクス基盤モデル(RFM)「RLDX-1」を公開した。人間並みの手先の器用さが求められる作業の自動化を視野に、データ基盤の強化や実証の拡大、標準化の推進に取り組む。
同社はこのほど、フィジカルAIのビジョンを共有するイベント「Dexterity Night in Seoul」を開催し、RLDX-1の性能と事業戦略を明らかにした。同イベントは、米サンフランシスコ、日本・東京、台湾・台北を経て、ソウルで締めくくられたグローバルツアーの一環として実施された。
RLWRLDのキム・ジュンヒ代表は、製造現場では依然として人の手に頼る工程が多いと指摘した。「韓国で最も自動化が進んだ工場でも自動化率は75%にとどまる。残る25%はなお人が直接処理している。日本、中国、米国でも状況は大きく変わらず、労働市場全体で見ても、なお半分近い作業が人手に依存している」と述べた。
その上で、「小型部品や車体部品の組み立てのような工程は、人間並みの手先の器用さがなければこなせない。こうした『労働のラストマイル』をAIで自動化するのがRLWRLDの目標だ」と強調した。
同社によると、RLDX-1は人間並みのAIデクステリティ(Dexterity、手先の器用さ)の実現に重点を置いたモデルだ。中核となる要素として、データ、モデル、導入の3つを挙げる。
データ面では、独自のデータパイプラインを構築した。キム代表は「人が動作するとロボットが追従する方式で、人の動作データを収集している」と説明した。
また、「Lotte Hotelがホテル空間を無償で提供し、専門スタッフの動作キャプチャーにも協力している。収集したデータをAIで解析し、人間並みの手先の器用さをロボットのデクステリティへ変換する」と述べた。
RLWRLDはデータ高度化に向けて、合成データパイプラインも活用する。キム代表は「全体の20%のデータを確保できれば、残る80%はAIで補完できる」とした上で、「この手法でも品質劣化をほぼ抑えられるモデルを構築し、NVIDIAの合成データパイプラインを上回る性能を確認した」と説明した。
導入面では、複数のハードウェアパートナーと連携した実証実験に力を入れる。キム代表は「NVIDIA、Hanwha、Lotteなど国内外の企業がRLWRLDに投資、あるいは共同実証を進めている」と述べた。
RLWRLDは、RLDX-1が従来のロボットAIモデルの限界を乗り越えた点も強調する。RLWRLDのシン・ジヌ最高科学責任者(Chief Scientist)によると、ロボット分野では近年、複数の作業を単一モデルで処理する基盤モデルへの関心が高まっている。
代表例としては、NVIDIAの「GR00T」シリーズがある。こうしたモデルは、視覚言語モデル(VLM)の場面理解や言語推論の能力をロボットの動作制御につなげる一方、単一フレームの情報に依存しやすいという課題があるという。
シン最高科学責任者は、主な課題を3つ挙げた。1つ目は、動く物体をつかむには時間経過に伴う動きの変化を捉える必要があり、静止画1枚では対応が難しい点。2つ目は、箱の中身を記憶するような作業では、過去の文脈を踏まえた判断が求められる点。3つ目は、プラグをソケットに差し込む、カードをつまみ上げるといった精密作業では、触覚や力のフィードバックが不可欠な点だ。
これに対し、シン最高科学責任者は「RLDX-1は、現存するロボット基盤モデルとして初めて、これら3つの要素を単一モデルに統合した」と説明した。
性能面については、「シミュレーションと実機テストの双方で、RLDX-1はNVIDIAのGR00Tを含む競合モデルを上回った。ロボット基盤モデルとして初めてシミュレーションベンチマークで78%超を記録し、人間並みの手先の器用さが求められる精密操作では、GR00T比で10倍超の成功率を示した」と強調した。
RLWRLDは、デクステリティの重要性に対する認識は広がっている一方で、商用化に必要な水準はなお定まっていないとみている。このため、NVIDIAと協力し、デクステリティのグローバル標準づくりにも注力しているという。
最近では、デクステリティの標準指標として「DexBench」も提示した。今後はNVIDIAと連携し、グローバル標準としての普及を進める方針だ。