Stellantisと全固体電池を開発するFactorial Energyは、北米で全固体電池を搭載した車両の公道走行試験を開始した。研究段階にとどまっていた次世代電池の検証が実車ベースの実証へ進んだことで、商用化に向けた競争は新たな段階に入った。
EVメディアのElectrekが11日(現地時間)に報じたところによると、両社はFactorial Energyの全固体電池セルを搭載したDodge Charger Daytonaの開発車両を用い、北米で公道試験に着手した。両社は、全固体電池を北米のEVプラットフォームに統合し、公道環境で検証する初の事例だとしている。
搭載したのは、Factorial EnergyのFEST(Factorial Electrolyte System Technology)セル。昨年の検証で、77Ahのセルとしてエネルギー密度375Wh/kg、600回超の充放電サイクル性能を確認したという。
充電性能と温度耐性も特徴として挙げた。Factorial Energyによると、FESTセルはバッテリー残量15%から90%まで約18分で充電可能。マイナス30度から45度までの環境下でも安定した性能を維持し、最大4Cの放電に対応する。
一方で、研究室レベルの成果を実車に落とし込むまでには課題もあった。Stellantisは、FESTセルを同社のSTLA Largeプラットフォームに統合する過程で、バッテリーパック構造と制御システムを新たに最適化したと明らかにした。安全性と性能の両立を重視したとしている。
Factorial Energyの最高経営責任者(CEO)、シユ・ファン氏は「セルの化学技術からバッテリーパック設計までを共同で構築したことが、公道走行試験の実現につながった」と述べ、「全固体電池の商用化には、こうした一体的な協業が不可欠だ」と強調した。さらに「今回の成果はFEST技術の単なる検証にとどまらず、車載用全固体電池の新たな基準を示すものだ」と評価した。
Factorial Energyはすでに複数のグローバル自動車メーカーと、全固体電池の商用化に向けた取り組みを進めている。協業先にはMercedes-Benz、Hyundai、Kia、Stellantisが含まれる。
Mercedes-Benzは昨年9月、Factorial Energyの全固体電池セルを採用したEQSベースの試験車で745マイル超を走行した。当時、Mercedes-Benzの技術責任者であるマルクス・シェーファー氏は、この技術がEV市場の「ゲームチェンジャー」になり得るとの見方を示していた。
Factorial Energyは今後、自動車以外にもロボティクス、航空宇宙、防衛産業へ適用分野を広げる計画だ。同社は、全固体電池によって従来のEVに比べ航続距離を最大50%改善し、1回の充電で600マイル(約965km)超の走行を実現できるとみている。
また同社は最近、特別買収目的会社(SPAC)のCartesian Growth Corp IIIとの合併を完了し、ティッカーシンボル「FAC」でナスダックに上場した。合併後の企業価値は約13億ドル(約1950億円)とされる。約1億1000万ドル(約165億円)を確保し、全固体電池の商用化を加速する方針だ。
業界では、今回の公道走行試験が全固体電池の商用化可能性を見極める重要な節目になると受け止められている。研究段階の成果が実際の運用環境でも確認されれば、次世代EV市場の競争構図に影響を与える可能性がある。