ステーブルコインの利回り設計が銀行の預金・融資に及ぼす影響が争点となっている(写真=Reve AI)

米コミュニティ銀行業界が、上院で審議中の暗号資産関連法案「クラリティ法案」への反対を強めている。業界団体のIndependent Community Bankers of America(ICBA)は、ステーブルコインへの利回り付与が預金流出と融資縮小を招く恐れがあるとして、反対広告キャンペーンを始めた。

12日付のブロックチェーンメディアCoinPostによると、ICBAは11日、暗号資産業界を念頭に置いた広告キャンペーンの開始を公表した。

ICBAが問題視しているのは、ステーブルコインの保有者に収益や利回りを付与する仕組みだ。暗号資産関連サービスが急速に広がれば、地域社会や消費者に新たなリスクをもたらしかねないと訴えている。

ICBAは、こうした仕組みが認められた場合、最大で1兆3000億ドルの預金流出と、8500億ドルの融資減少につながる可能性があると試算した。

あわせて、コミュニティ銀行は米国の中小企業向け100万ドル未満の融資の約60%、農業融資の80%以上を担い、地域向けに4兆1000億ドル規模の融資を供給していると強調した。

ICBAのレベッカ・ロメロ・レイニーCEOは、コミュニティ銀行は地域経済の基盤だと指摘したうえで、暗号資産企業に規制の抜け穴を生むリスクについて、国民の理解は十分ではないとの認識を示した。

対立が強まっているのは、上院で審議が進むクラリティ法案を巡ってだ。同法案には、暗号資産業界に対する連邦レベルの規制枠組みを整備する内容が盛り込まれている。

上院銀行委員会は5月15日、同法案を賛成15、反対9で可決した。

焦点となっているのは、ステーブルコインの保有残高に対する利回り付与をどこまで認めるかだ。委員会審査では、単なる保有に対する利回り付与は禁じる一方、取引利用など特定の行為に連動する報酬を認める条項が採用された。

ただ、ICBAはこの内容では規制としてなお不十分だとみており、より厳格な対応を求めている。今回の広告キャンペーンも、こうした懸念を議会と世論に直接訴える狙いがある。

銀行業界からも懸念の声が上がっている。JPMorgan Chaseのジェイミー・ダイモンCEOは5月29日、Fox Businessのインタビューで、現行案は銀行並みの保護措置がないまま、暗号資産企業に事実上の利払いを認める内容だと批判した。

ダイモン氏は、このまま法案が成立すれば最終的には失敗に終わるとの見方を示し、JPMorganはこれに関与しない考えを明らかにした。

一方、暗号資産業界は反発している。Digital Chamberのコディ・カーボンCEOは、ICBAのキャンペーンはメインストリートを守るためではなく、時代遅れのビジネスモデルを競争から守ろうとするものだと批判した。

Blockchain Associationのサマー・マーシンガーCEOも、新条項は消費者保護を強化するとともに、暗号資産を初めて規制の枠組みに組み込むものだとして、ICBAの主張に反対する姿勢を示した。

法案の先行きはなお不透明だ。JPMorganのアナリストは最近のリポートで、今後は上院本会議で60票を確保すること、下院との文言調整を終えること、大統領の署名を得ることの3段階が残っていると指摘した。

さらに、夏季休会後は中間選挙対応の影響で審議期間が約8週間にとどまる可能性があり、年内成立の余地は狭まりつつあるとの見方を示した。

クラリティ法案を巡る対立は、業界間の利害対立にとどまらず、ステーブルコイン規制の方向性と金融業界の競争環境を左右する論点へと広がっている。上院本会議で、ステーブルコインへの利回り付与を巡る条項がどこまで修正されるかが最大の焦点となる。

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