AI搭載スマートグラスの普及が韓国で本格化するなか、試験会場や学校、各種施設での管理ルール整備を求める声が強まっている。試験での不正利用の摘発が相次ぎ、盗撮リスクも指摘される一方、通信・端末業界では新たな成長機会として期待も高まっており、利用場所に応じた基準づくりが課題になっている。
◆スマートグラス不正が現実に、試験会場の管理に死角
韓国TOEIC委員会は、先月10日と31日に実施したTOEIC定期試験で、スマートグラスを使った不正行為の試みを摘発した。受験者はいずれもスマートグラスを着用したまま受験しようとし、試験監督に発見されたという。
スマートグラスは写真・動画の撮影に加え、AIを活用した情報検索や翻訳機能も備える。外見が通常の眼鏡と大きく変わらないため、試験会場では問題の撮影や情報検索などに悪用される懸念が強い。韓国産業人力公団が実施する定期の技師向けコンピューターベース試験(CBT)でも、スマートグラスを着用した受験者3人が摘発されており、端末普及に伴う副次的な問題が表面化している。
大学修学能力試験も例外ではない。試験会場にはスマートフォンやスマートウォッチなどの電子機器を持ち込めず、スマートグラスも持ち込み禁止の対象となる。ただ、見た目では一般の眼鏡と判別しにくく、監督側が着用の有無を個別に確認しなければならない負担が残る。
教育現場でも警戒感が高まっている。教育関係者は「大学の中間・期末試験のような場面では摘発が非常に難しいだろう」としたうえで、「小中高校生の間にも普及が進めば、単なる所持品検査では対応しきれなくなる」と指摘した。
現行の初等・中等教育法では、授業中の携帯電話などスマート機器の使用を制限している。障害がある生徒や特別支援教育が必要な生徒が補助機器として使う場合などに限って例外が認められ、具体的に制限する機器の種類は校則で定める仕組みだ。ただ、スマートグラスのような眼鏡型端末は現場での判断が難しい。特に度付きレンズを装着した製品では、視力矯正を理由に着用の必要性を主張する可能性もあり、学校現場の混乱が懸念される。
違法撮影への懸念も根強い。代表的な製品とされるMetaのスマートグラスは、カメラ起動時に前面の発光ダイオード(LED)が自動で点灯する設計になっているが、CoupangやAliExpressなどのオンラインモールでは、このLEDを隠すステッカーやカバーが販売されている。教室で同級生や教員を狙った盗撮犯罪が相次ぐなか、別途の管理基準が必要だとの指摘が出ている。
◆通信・端末業界には成長機会、ルール整備が追いつくか
一方で、スマートグラスを一律に禁止・遮断の対象として扱うことは難しい。スマートグラスの普及は、通信・デバイス産業にとって新たな成長機会とみられている。スマートフォンを取り出さずに音声でAIを呼び出し、撮影や翻訳を利用する使い方は、次世代ウェアラブルサービスの代表例と位置付けられる。利用者が生成・送信するデータ量の増加に伴い、通信利用の拡大や新たな付加価値サービス需要につながるとの期待も大きい。
市場の拡大ペースも速い。Metaは先月25日、第2世代のスマートグラス5モデルを韓国で正式発売した。Samsung Electronicsも、Googleと協業したスマートグラスを今年下半期に披露する予定だ。Metaに続いてSamsung Electronics・Google陣営も参入することで、韓国のスマートグラス市場はさらに拡大するとの見方が業界では大勢を占めている。
課題は、製品普及のスピードに対して現場の基準整備が追いついていないことだ。Metaは、ディスプレイの情報などをレンズに直接表示するディスプレイ型モデルも開発済みとされる。こうした製品が商用化されれば、不正への対応は一段と難しくなる可能性がある。
業界では、製品を一律に制限するのではなく、利用場所ごとのリスクに応じた基準づくりが必要だとの見方が強い。日常空間では利用者への告知や撮影表示機能を軸に管理し、試験会場や学校、保安施設など機微性の高い空間では、持ち込みや使用に関する基準をより明確にすべきだという。
業界関係者は「問題は技術そのものではなく、どこで使われるかだ。スマートフォンやスマートウォッチを前提にしてきた既存の管理基準を、より精緻に見直す必要がある」と話した。