SpaceXは新規株式公開(IPO)で、個人投資家向けの配分比率を最大30%に引き上げる方針だ。口座残高2000ドルから応募できる証券会社もある一方、上場直後の値動きや短期売却への制限、赤字基調、イーロン・マスク氏への議決権集中、銘柄コードの取り違えといった点には注意が必要となる。
Bloombergが10日(現地時間)に報じたところによると、SpaceXは公募株の最大30%を、個人口座を通じて購入する個人投資家に割り当てる計画だ。
IPOにおける個人向け配分は通常5〜10%程度にとどまることが多く、今回の水準は異例の大きさといえる。申し込みはCharles Schwab、Fidelity、Robinhood、SoFi、Morgan StanleyのE*TRADEを通じて受け付ける。
Fidelityでは、口座残高が最低2000ドルの投資家でも公募株に応募できる。他のIPO案件では10万ドル、多い場合は50万ドル規模の資産残高が求められるケースもあり、ハードルは大きく下がる。
もっとも、需要が膨らめば、申し込んだ投資家全員が配分を受けられるとは限らない。SpaceXの上場は過去最大級のIPOになる可能性があるとみられており、個人マネーの流入も大きいと見込まれている。
市場でまず焦点となるのは、上場直後の値動きだ。SpaceXは、個人投資家の参加比率が高いことで株価が大きく振れる可能性があると警告している。
2021年のGameStopに代表される「ミーム株」は、個人投資家の売買が相場を大きく動かした例として知られる。初値の急騰がそのまま安定した投資収益につながるとは限らない。
短期売買にも注意が必要だ。一部の証券会社は、IPOで配分を受けた株式を上場後数日以内に売却した投資家について、その後の公募株配分を制限する方針を設けている。上場直後に株価が急騰しても、すぐに売却すれば将来のIPO参加で不利になる可能性がある。
フロリダ大学ウォリントン経営大学院のIPO研究者、ジェイ・リター氏によると、1980〜2025年のIPO銘柄の初日平均騰落率は約19%だった。一方、初日の取引を除くと、その後5年間のパフォーマンスは同規模の既上場企業を年平均3.6%下回ったという。
財務面も投資判断の材料となる。SpaceXは3月末時点で291億ドルの負債を抱える。損益面では、昨年に49億ドル、今年1〜3月期にも43億ドルの損失を計上した。会社側は今後も黒字化できない可能性があるとしている。
ガバナンス面では、議決権1個のクラスA株5億5560万株が公募対象となる一方、議決権10個のクラスB株は公募しない。マスク氏はクラスB株を大量に保有しており、上場後も全議決権の82%以上を握る見通しだ。SpaceXは、マスク氏と、同氏が関与するTeslaなど他社との間で利益相反が生じる可能性を認めている。
銘柄コードの取り違えにも注意したい。SpaceXのティッカーは「SPCX」の予定だが、リチャード・ブランソン氏のVirgin Galactic Holdingsの「SPCE」とは1文字違いにすぎない。上場直後の注文が集中する局面では、銘柄名やコードの確認が欠かせない。