米シアトル市議会は9日、新設データセンターを対象に1年間の凍結措置を全会一致で可決した。対象は今後計画される新規案件で、電力・水の使用の増加や騒音、環境負荷、公共料金の上昇などといった懸念を踏まえ、関連ルールと審査基準を見直す。TechRadarが10日付で報じた。
今回の措置は、すでに承認済みの事業には適用されず、新たに持ち上がるプロジェクトが対象となる。シアトル市は、データセンターの拡大によって電力消費と水使用が増え、騒音や環境負荷が強まる可能性があるとみている。住民負担の増加につながりかねない点も、判断材料となった。
デボラ・フアレス市議は市の報道資料で、今回の決定はAIやデータセンターそのものを止めるためのものではないと説明した。今後の案件に適用する規制の枠組みを整える時間を確保するのが目的だという。
地域の反発は、大規模計画の検討状況が明らかになったことで強まった。4社がシアトル市内外で最大5件の大型プロジェクトを検討しており、すべて実現した場合、必要電力は最大369MWに達する可能性があるという。市全体の電力使用量の約3分の1に相当する規模とされる。
市議会の会議では、住民から電気料金の上昇懸念や送電網の安定性、電子廃棄物の増加、土地利用のあり方について相次いで懸念が示された。住宅への影響に加え、投入される資源に比べて雇用創出効果が限られるとの指摘も出た。
エディ・リン市議は、数万人規模の住民意見を聞いたとしたうえで、AIブームで大企業が過去最大級の利益を上げる一方、その負担をシアトル市民が背負う構図になってはならないと述べた。今回の凍結措置は、こうした論点を個別案件の審査とは切り離して整理する時間を確保する意味合いが強いとしている。
シアトルはAmazonとMicrosoftの本拠地でもある。両社は世界のクラウド市場で大きな存在感を持っており、そうした都市が新設データセンターの拡大を一時止めたことは、AIインフラの拡大が地域レベルで電力、住宅、環境の問題と正面からぶつかり得ることを示す事例として注目される。
シアトル市は今後1年、データセンター関連の規則と審査基準の見直しを進める。焦点は、AIインフラ需要を取り込みつつ、送電網への負荷と住民コストの増加をどう抑えるかに移る。