SpaceXのIPO観測を巡り、市場の関心が高まっている(写真=Reve AI)

イーロン・マスク氏が率いるSpaceXが、約750億ドル(約11兆2500億円)規模の新規株式公開(IPO)を検討しているとの観測が浮上し、歴代の大型IPOに改めて注目が集まっている。香港紙サウスチャイナ・モーニング・ポスト(SCMP)が10日、現地時間ベースで報じた。

IPOの大型案件は、単なる資金調達にとどまらない。各国の産業政策や市場環境、投資家心理を映し出す事例としても位置付けられる。歴代の調達額上位を振り返ると、エネルギー、電子商取引、通信、自動車、金融といった幅広い業種が並ぶ。

調達額で首位となっているのは、サウジアラビアの国営石油会社Saudi Aramcoだ。2019年12月にサウジ証券取引所タダウルへ上場し、294億ドル(約4410億円)を調達した。ムハンマド・ビン・サルマン皇太子が進める「ビジョン2030」の中核案件の一つだった。

もっとも、公開された株式は約1.5%にとどまった。需要の中心も世界の機関投資家ではなく、サウジ国内や中東地域の投資家だった。それでも、調達額ベースでは現在も世界最大のIPO記録となっている。

2位は中国の電子商取引大手Alibaba。2014年9月にニューヨーク証券取引所へ上場し、250億ドル(約3750億円)を調達した。上場初日の株価は38%以上上昇し、時価総額は約2310億ドル(約34兆6500億円)に達した。当時は、中国本土メディアが同社をGoogleに次ぐ世界2位のインターネット企業と評するなど、高い期待を集めた。

3位はSoftBank。2018年12月に東京市場へ上場し、236億ドル(約3540億円)を調達した。孫正義会長率いるSoftBank Groupは、通信子会社の上場によって投資資金を確保し、グループの成長投資につなげる狙いがあった。

ただ、上場初日の株価は14%以上下落した。大規模通信障害に加え、Rakuten Mobileとの競争激化への懸念が投資家心理を冷やした。大型IPOでも、市場の評価が必ずしも伴うとは限らないことを示した案件といえる。

4位はGeneral Motors(GM)。2010年12月にニューヨーク市場とトロント市場へ同時上場し、231億ドル(約3465億円)を調達した。世界金融危機のさなかに経営破綻し、破産保護手続きを経てから17カ月で市場に復帰した。

GMは販売減少や景気後退、燃料価格の急騰を背景に、2009年にニューヨーク証券取引所(NYSE)で上場廃止となった。その後、米政府は再建に向けて約500億ドル(約7兆5000億円)近い資金を投じた。GMのIPOは、危機に陥った企業の再生と、政府支援を経た民間市場への復帰を象徴する案件となった。

5位は中国農業銀行。2010年7月に上海市場と香港市場へ同時上場し、221億ドル(約3315億円)を調達した。欧州財政危機の影響で中国本土市場と香港市場の値動きは荒かったが、大型上場は予定通り完了した。これにより、中国の4大国有商業銀行の上場が出そろった。

中国農業銀行のIPOは、中国の金融システムの市場化と国有銀行改革の流れを示す事例として受け止められた。

SpaceXが検討しているとされるIPOは、これらの記録を大きく上回る可能性がある。仮に750億ドル規模の調達が実現すれば、Saudi Aramcoの過去最大記録を大幅に更新することになる。

歴代の大型IPOを見ても、その意味合いは案件ごとに異なる。Saudi Aramcoと中国農業銀行は国家戦略の色彩が濃く、Alibaba、SoftBank、GMはそれぞれインターネット産業の拡大、投資戦略の転換、危機後の再生という市場の流れを反映していた。

SpaceXもまた、宇宙開発や衛星インターネットに加え、AIインフラ関連でも期待を集める企業だ。上場が実現すれば、過去最大IPOの更新だけでなく、宇宙・AIインフラ企業に対する世界の投資需要を測る試金石にもなりそうだ。

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