Dassault Systèmesでシミュレーションソリューション「SIMULIA」を統括するミシェル・アッシュCEOは11日、MODSIMとAIの組み合わせによって設計・解析プロセスを大幅に短縮できるとの考えを示した。NVIDIAとの協業では、シミュレーションの中核となるソルバーのGPU対応を進めており、7月以降はバーチャルツインやAIアシスタント関連機能も順次提供する。
アッシュ氏は同日、Dassault Systèmes Koreaが開催した「SIMULIA User Day 2026」の会場で記者懇談会に応じ、「MODSIMで40時間かかる設計を4時間に短縮し、そこにAIを組み合わせれば4秒以内で実行できる」と述べた。
同氏は、モデリングとシミュレーションを単一プラットフォーム上で統合するMODSIMとAIが、エンジニアリングのあり方を変えつつあると強調した。「より速く、より低コストで製品を開発し、より多くの人に届けながら、環境負荷も抑えられる」としている。
今回示した変化の軸は、大きく3つあるという。1つ目は、計算性能の向上を担う「Physics Foundation」だ。アッシュ氏は、NVIDIAとの協業を通じてソルバーエンジンをGPU向けに再設計していると説明し、「計算速度が確実に向上することを確認している」と述べた。
2つ目はMODSIMだ。従来はCAD設計、メッシュ設定、シミュレーション解析を順に進める必要があったが、MODSIMでは設計段階からシミュレーション結果を即座に確認できるという。Fordでは、MODSIMの導入によって設計時間を40時間から4時間に短縮したとしている。
3つ目がAIの活用だ。アッシュ氏は「MODSIMで4時間まで縮めた工程を、AIによってさらに4分まで短縮できる」と述べ、MODSIMをAI活用の第一段階と位置付けた。
Dassault Systèmesは、バーチャルツインを基盤に据えた「3D Universe」を長期ビジョンとして掲げている。これは、製品の設計から製造、使用、保守、リサイクルに至るまで、ライフサイクル全体を仮想環境でシミュレーションできるようにする構想だ。
アッシュ氏は、「試作前に製品ライフサイクル全体を把握できれば、市場投入までの時間、顧客満足度、環境負荷のすべてを改善できる」と説明した。
3D Universeを支える技術基盤としては、Virtual Twin、Virtual Companion、そして両者を組み合わせた統合環境「Generative Experience」を挙げた。
このうちVirtual Twinは、製品が実環境でどのように動作するかを物理法則に基づいて再現する仕組みで、ここでもAIが重要な役割を担う。アッシュ氏は、AIと機械学習を組み合わせた「Virtual Twin of Physics Behavior」を7月に提供開始する予定だと明らかにした。
Virtual Companionは、エージェント型AIを基盤とする支援機能で、「Aura」「Leo」「Marie」の3種類を用意する。Auraはプロジェクト計画やサプライヤー分析などを担い、Leoは機械設計、シミュレーション、流体工学を支援する。Marieは新素材や製品の開発を支える役割を担うという。
アッシュ氏はデモで、Leoを使って写真1枚から3D CADモデルを生成し、ねじり試験を実施した上で部品の適合性を検討する一連の流れを紹介した。Virtual Companionの一部機能は7月から利用可能となり、残る機能も年末までに順次提供する予定だ。
また、SIMULIA AIではOpenAI、Mistral、Anthropicなど複数の大規模言語モデル(LLM)を用途に応じて使い分けるほか、過去40年にわたり顧客との協業で蓄積してきたシミュレーション分野の知見も組み合わせて提供するとした。
アッシュ氏は、Virtual Companionの普及によってシミュレーション活用のハードルが下がり、専門家の役割も変化するとの見通しを示した。専門家は、非専門家でも使いやすいようにツールを検証し、ワークフローの設定やガードレールの整備を担う。一方、非専門家はリスクの低い業務を担当し、専門家は検証や認証など高度な業務に注力する形になるという。
Dassault Systèmesは年初、自社のバーチャルツインプラットフォームとNVIDIAのAIコンピューティング基盤を統合し、産業向けAIプラットフォームの構築を進める協業を発表している。アッシュ氏によれば、SIMULIA部門におけるNVIDIAとの連携は、ソルバーの高速化とAI活用の2軸で進めている。
具体的には、NVIDIAのCUDA技術を活用してソルバーをGPU向けに書き換えるとともに、NVIDIAのデジタルツイン基盤「Omniverse」とDassault Systèmesのプラットフォームを連携させる取り組みも進めているという。