MastercardがAIエージェント同士の自律決済に向けた新プログラムを立ち上げ、RippleがXRP Ledger(XRPL)とステーブルコイン「RLUSD」で参画した。企業向けパイロットではXRPへの言及がなく、RippleがRLUSDとXRPを用途別に使い分ける戦略が浮き彫りになっている。
ブロックチェーンメディアのU.Todayによると、Mastercardは10日(現地時間)、「Agent Pay for Machines」を正式に開始した。
このプロジェクトにはStripe、Coinbase、OKXなど30社超が参加する。Rippleは声明で、XRPLとRLUSDが、ロボットのデジタルパスポート検証や取引上限の管理を担うMastercardの決済基盤で活用されると明らかにした。
注目されるのは、Rippleの参画そのものより、実際の決済フローでどの資産が採用されたかだ。Mastercardの企業向けパイロットでは、ネイティブトークンであるXRPに触れられていない。価格安定性が重視される企業間決済では、値動きの大きい暗号資産ではなく、RLUSDが選ばれたとみられる。
一方、RippleXはオープンソースの開発ツール「XRPL AI Starter Kit」を公開し、AIコマースでXRPを直接活用する仕組みを打ち出した。企業向け決済基盤ではRLUSDを軸に据えつつ、開発者向け環境ではXRPを基本的な決済資産に位置付ける構図だ。
RippleXのエンジニアリング責任者、J・アヨ・アキニェレ氏は、このツールにx402プロトコルを組み込み、AIエージェント間の直接決済を支援すると説明した。これによりAIエージェントは、APIリクエストやコンピューティングサービスの利用料をRLUSDまたはXRPでやり取りできる。公開時点で両資産に対応する設計としているという。
資産変換にも対応する。Mastercard側からRLUSDが送金された場合、内蔵するXRPLの分散型取引所(DEX)を通じて、受取側は3〜5秒以内にXRPで受け取ることも可能だとしている。
AnthropicのAIモデル「Claude」との連携も拡大した。RippleXは「Claude Skills」の統合により、ウォレットの作成、残高確認、XRPとRLUSDの送金を直接扱えるようにしたと説明した。
今回の発表は、RippleがAI決済市場で資産ごとの役割分担を進めていることを示している。Mastercardのような企業向け決済の領域では、XRPではなくRLUSDとXRPLが前面に出た一方、RippleXは別の開発スタックでXRPを直接利用できる環境を整えた。
この構図からは、伝統的な金融事業者とオープンソースの開発エコシステムで求められる要件の違いも見えてくる。企業向け決済では価格安定性と統制手段が重視されるのに対し、独立したAIコマース環境では低コストと直接決済がXRPの強みとして打ち出された。RippleのAI決済戦略は当面、RLUSDが企業向けの入り口を担い、XRPが開発者やエージェント間の精算資産を狙う方向で展開する可能性がある。
Rippleは「AIエージェントが企業の代理として取引を始めるなか、決済には速度だけでなく、信頼、統制、そして価値移転に関する明確なルールが必要だ。XRP LedgerとRLUSDを通じて、信頼できるエージェント主導の決済インフラを構築している」と投稿した。