米核融合スタートアップのAvalancheは、卓上型の小型試作機で約1100万度のプラズマ生成に成功したと発表した。核融合反応に必要とされる高温域に達したことで、商用化に向けた一つの技術的な節目を示した形だ。ただ、実用化にはプラズマ密度や持続時間の確保、エネルギー純増の実証など、なお複数の課題が残る。
TechCrunchが10日付(現地時間)で報じたところによると、Avalancheは最近の実験で核融合反応に必要な超高温プラズマの生成に成功したと明らかにした。
核融合は、太陽がエネルギーを生み出す仕組みと同じく、軽い原子核を融合させて大きなエネルギーを取り出す技術。次世代のクリーンエネルギーとして期待が高い一方、商用電力を供給する核融合発電所はまだ実現していない。
核融合の商用化に向けては、高温プラズマの生成に加え、十分な密度の確保や反応の持続時間の延長といった課題を段階的に克服する必要がある。このうち、プラズマを摂氏1000万度超まで加熱することは、核融合反応を引き起こすための代表的な目安の一つとされる。
Avalancheは今回の実験で約1100万度のプラズマを達成し、この水準を上回ったと説明した。温度は太陽中心部に近いレベルだという。
核融合分野では、温度そのものではなく粒子エネルギーを基準に性能を評価するのが一般的で、注目される目安の一つが1キロ電子ボルト(keV)だ。Commonwealth Fusion SystemsのCEO、ボブ・マンガード氏は過去に、「1keVの水準に到達すれば世界が注目する」と述べている。
もっとも、高温プラズマを実現しただけで核融合発電の成立を意味するわけではない。実際に発電に結び付けるには、温度に加えて十分なプラズマ密度と反応の持続時間が必要になる。高温・高密度の状態を安定して維持できて初めて、連続的な核融合反応と、投入エネルギーを上回る出力が視野に入るためだ。
Avalancheも今回の成果について、エネルギー純増の達成を意味するものではないと明確にしている。そのうえで、小型炉の設計が核融合反応を誘発できる方向へ進んでいることを示したと強調した。
同社の戦略は、他の核融合企業とは一線を画す。多くの核融合スタートアップが数十〜数百メガワット(MW)級の発電を目指して大型炉を開発するのに対し、Avalancheは小型・低コストの核融合システムを狙う。より小規模な発電装置を実用化できれば、ディーゼル発電機や天然ガスタービンとも競合できるとみている。
コスト面も差別化材料として打ち出す。Avalancheは、これまでの開発に投じた資金が5000万ドル未満だと明らかにした。多くの核融合企業が数億ドル規模を調達しているのに比べると、資金投入は小さいとしている。
開発サイクルの速さも強みとする。最新装置「Genie」の核融合コアの直径は約5インチにとどまり、昨年秋以降だけで25回以上改良を重ねたという。装置が小さいほど、実験と設計変更を短い周期で繰り返せるためだ。
一方、技術検証はまだ初期段階にある。Avalancheは今回の結果を学術誌には発表しておらず、査読も受けていない。代わりに、マサチューセッツ工科大学(MIT)に所属するプラズマ物理学者の検証を受けたとしている。
業界では、今回の成果を小型核融合装置の可能性を示す前進と受け止める見方がある一方、今後の焦点はプラズマ密度と持続時間の確保、さらにエネルギー純増の実証に移るとの見方が強い。
Avalancheが掲げる小型核融合戦略が実際の商用発電につながるかどうかは、今後の追加実験と外部検証の結果が左右しそうだ。