中国の半導体装置メーカーPRINANOは、オランダASMLの深紫外線(DUV)露光装置を使わずに、フォトニックチップ向け8インチウエハーの生産に成功したと明らかにした。米国とオランダによる輸出規制で先端露光装置の調達が難しくなるなか、中国半導体業界の代替プロセスとして注目を集めている。
Gigazineが10日付で報じたところによると、PRINANOは自社開発のナノインプリントリソグラフィ(NIL)技術を用い、8インチのフォトニックチップ向けウエハーを製造したと発表した。
同社は5日にWeChatで公表した資料で、光通信やLiDAR向けのフォトニックチップを、DUV露光装置を使わずウエハーレベルで生産できるようになったと説明した。製造コストは従来方式に比べて約10分の1に抑えられるとしている。
今回の発表が関心を集める背景には、中国半導体産業を取り巻く装置輸出規制がある。先端半導体の製造に不可欠なDUVおよび極端紫外線(EUV)露光装置の市場は、ASMLが事実上握っている。
米国の対中技術規制を受け、オランダ政府もASML製装置の中国向け輸出を制限している。このため中国企業は、先端半導体の製造に必要な中核装置の確保に苦戦しており、代替プロセスの開発を重要課題としてきた。
PRINANOが採用したのはNILだ。光で回路パターンを形成する従来の露光方式とは異なり、ナノレベルのパターンを刻んだ金型をウエハーに直接転写する。工程を比較的シンプルにでき、装置コストを抑えやすいのが特徴とされる。
同社は、今回用いた「PL-AS 真空エアクッション・ナノインプリントリソグラフィ」装置で、10ナノメートル(nm)以下の解像度を実現できると説明した。光通信およびLiDAR向けフォトニックチップのウエハーレベル生産に成功したことも強調している。
PRINANOは昨年、顧客向けにNILベースの半導体製造装置を納入した実績があるとし、技術が研究段階にとどまらず、実際の産業用途に適用されている点もアピールした。
もっとも、業界では今回の成果を慎重に見る声もある。PRINANOはコスト削減効果を前面に打ち出しているが、歩留まりやスループット、量産時期といった主要指標は公表していない。半導体製造では、技術実証そのものよりも安定した量産能力が事業性を左右するためだ。
半導体専門の分析会社Semianalysisも、NILは特定分野でコスト競争力を持つ可能性がある一方、最先端半導体製造でASMLのEUV装置を置き換えるのは容易ではないと分析した。処理量や歩留まり、プロセス統合能力を確保できなければ、商業ベースでの優位性は得にくいとしている。
NILの活用は中国に限った動きではない。日本ではCanon、大日本印刷、KioxiaがNILベースの半導体プロセスを共同研究しており、一部の生産現場では商用化に向けた検証が進んでいる。
業界では、NILが先端露光装置を全面的に代替するというより、フォトニックチップやメモリーなど特定分野でコスト削減や工程簡素化を狙う補完技術として使われる可能性に注目が集まっている。
今回の発表は、先端装置の輸出規制下でも中国半導体業界が独自技術の確保を急いでいることを示す事例といえそうだ。実際の産業的なインパクトを見極めるには、今後、歩留まりや生産量、量産時期など、より具体的なデータの開示が焦点となる。