電池を原材料に戻さず、電極をそのまま再生する手法が研究の中核となる。写真はイメージ=Shutterstock

米Cornell Universityの研究チームが、使用済みリチウムイオン電池の電極を分解や溶融を行わずに再生する技術を開発した。再生した電極で作製したセルは初期容量の最大95%を回復し、製造コストも最大56%削減できる可能性があるという。

オンラインメディアのGigazineが10日(現地時間)、この研究成果を報じた。

今回の研究の特徴は、使用済み電池を原材料レベルまで分解せず、電極そのものを再生する点にある。研究チームはこの手法を「DEER(Direct Electrode-to-Electrode Regeneration)」と名付けた。

従来のリチウムイオン電池リサイクルでは、電池を高温で溶融したり、粉砕後に化学処理を施したりして、リチウムやニッケル、コバルトなどの金属を回収する手法が一般的だ。一方で、この方法では電極の構造が失われるため、再び電池を作るには精製や再加工が必要になる。

これに対しDEERは、使用済み電池から取り出した電極を、集電体に付いたままの状態で再生する。電極製造工程の多くを省略できるため、コストとエネルギー消費の両面で削減効果が見込める。

研究チームは、電池性能の低下を招く要因の1つとして、SEI(Solid Electrolyte Interphase)膜に着目した。SEI膜は充放電を繰り返す過程で電極表面に形成され、厚くなるとリチウムイオンの移動を妨げ、容量や出力の低下につながる。

そこで研究チームは、DMI(1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン)を溶媒として用い、劣化した電極表面のSEI膜を除去したうえで、性能回復処理を施した。これにより、電極を再利用可能な状態に戻すことに成功したという。

実験では、DEER工程を経た電極から作製した再生セルが、初期容量の最大95%まで回復した。充放電を繰り返した場合でも、安定した性能を維持したとしている。

コスト面でも優位性が見込まれる。研究チームは、この技術を適用した場合、従来のリサイクル工程に比べて再生電池の製造コストを最大56%削減できると分析した。

もっとも、すべての使用済み電池に適用できるわけではない。主な対象はSOH(State of Health)が70~80%の電気自動車向け使用済み電池で、深刻に損傷した電池を新品同様まで戻せるわけではないとしている。

今後は、産業規模での実証に加え、リチウム損失などSEI膜以外の劣化要因に対応する技術開発も必要になるという。

業界では、使用済み電池を原材料に戻して再製造する従来型リサイクルとは異なるアプローチとして注目が集まっている。部材の状態を維持したまま修復・再使用できれば、電気自動車用電池の再利用市場の経済性改善につながる可能性があるためだ。

研究チームは、使用済み電池を材料レベルではなく部品単位で再生して再利用する新たなリサイクルモデルの実用化が、現実味を帯びてきたと評価している。

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