中国向けAIチップ規制の全面拡大を台湾が検討している。写真=Shutterstock

台湾が、中国向けAIチップの輸出規制を全顧客対象に広げる案を検討していることが分かった。HuaweiやSMICといった個別企業への規制にとどまらず、中国向け販売全般の管理や、AIサーバー密輸への刑事罰導入まで含む可能性がある。

GIGAZINEが10日付の記事で報じたところによると、今回の焦点は、台湾が米国の対中輸出規制にどこまで歩調を合わせるかにある。現時点では、台湾は中国向けの無許可AIチップ輸出そのものを刑事罰の対象としていない。

このため当局は、販売業者に対して米国規則違反の可能性を警告することはできても、実際の捜査や起訴では文書偽造など既存法令の適用に頼ってきた。

こうした制度上の空白は、NVIDIA製チップを搭載したAIサーバーの迂回輸出疑惑を機に改めて注目を集めた。2026年5月には、Nvidia搭載サーバー約50台を巡る密輸疑惑で3人が拘束されたが、適用された容疑は輸出規制違反ではなく文書偽造だった。

新たな規制が導入されれば、チップ単体に加え、完成品であるAIサーバーの輸送や輸出も直接取り締まれる枠組みが整う可能性がある。

台湾は2025年6月、HuaweiとSMICをブラックリストに追加し、台湾企業が両社と取引する際に政府許可を義務付けた。ただ、規制対象は特定企業に限られており、それ以外の中国顧客にAIチップやAIサーバーが流入する余地は残っていた。

台湾が米国と同様に、一定以上の処理性能を基準に規制対象を定めれば、どのクラスのAIサーバーが中国本土向けに出荷できないのかも明確になる見通しだ。

台湾経済部は、「戦略的ハイテク製品」に対する監督を強化し、国際的な輸出規制との整合性も高める方針を示している。先端チップを規制対象に含めるかどうかを巡り、米国との協議を続けているとも説明した。

最終案は、台湾と米国の高官間で内容を確認したうえで決まる見通しだ。

この問題が注目される背景には、台湾がAIサーバー供給網の中核を担っている事情がある。Foxconnは世界のAIサーバー市場で約40%を占めるとされるほか、Quanta Computer、Wistron、WiWynn、Inventecなども、NvidiaやAMDのアクセラレーターを搭載したラック型AIサーバーを世界のデータセンター向けに供給している。

TSMCによる対中先端チップ生産がすでに制限されていても、台湾で組み立てられたサーバーが事後的に中国へ流入すれば、規制の抜け穴になりかねないとの懸念がある。

一方で、台湾国内では規制強化に伴う負担も指摘されている。半導体産業は、台湾経済と安全保障の両面を支える基幹産業だからだ。

リン・ジャルン外相は過去に、半導体を「武器化したくない」との趣旨の発言をしている。対中規制を過度に強めれば、自国産業にも重荷となりかねないとの慎重論がある。

米国政界からの圧力も強まっている。ジム・バンクス上院議員とアンディ・キム上院議員は、TSMCのようなファウンドリーが、中国企業の海外子会社を経由して先端AIチップを生産する迂回ルートを遮断すべきだと求めた。

米商務省産業安全保障局(BIS)は、中国企業のマレーシアなど第三国子会社への販売には許可が必要だと明確化した。ただ、専門家の間では、中国企業のフロント企業がカスタムチップを発注する経路まで十分に封じ込められているか疑問視する見方もある。

対中輸出を巡る論争はNvidiaにも広がった。エリザベス・ウォーレン上院議員は、ジェンスン・フアンNvidia最高経営責任者(CEO)に対し、中国向け販売と輸出規制順守を巡って上院銀行委員会で証言するよう求めた。

これに対しフアンCEOは、公聴会での公開証言の代わりに、ウォーレン議員と委員会関係者をNvidia本社に招き、同社技術と米国のAIエコシステムについて説明する考えを示した。フアンCEOはこれまでも、対中販売を制限しても中国のAI開発を大きく遅らせる効果は乏しく、むしろ米企業の競争力を損なう可能性があると主張してきた。

中国は、米国製AIチップへの依存を下げる方向で対応を進めている。今後5年間で約2950億ドルを投じ、全国規模のAIデータセンターネットワーク構築を検討していると伝えられた。

国家発展改革委員会が主導する構想で、2028年までに分散した計算施設を接続し、中核技術の少なくとも80%をHuaweiなど国内供給企業から調達する内容だという。

台湾が中国の顧客全般を対象とするAIチップ規制に踏み切れば、半導体とAIインフラの供給網分断は一段と鮮明になる可能性がある。台湾の最終判断は、中国向け先端チップやAIサーバーの流通経路だけでなく、米中を軸に再編が進むAIインフラの構図にも影響を与えそうだ。

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