全固体電池を搭載した電動航空機が、初の有人試験飛行に成功した。電気自動車に続き、航空分野でも全固体電池の実用化に向けた一歩として注目される。
CleanTechnicaによると、電動航空機の開発を手がけるHelios Horizonは10日、全固体電池を搭載した機体で有人試験飛行を完了したと発表した。無人試験ではなく、操縦士が実際に搭乗して飛行した。
試験飛行は6日に実施した。機体には主席試験操縦士1人が搭乗し、長距離飛行ではなく、新たに搭載した全固体電池の重量配分や操縦特性を確認することを主眼とした。
試験機は全長約25フィート、翼幅61フィートで、最大離陸重量は1300ポンド(約600kg)。飛行は地上約500フィート以下の低高度で行われ、最高速度は時速60マイル(約96km)だった。
飛行に先立ち、同社はバッテリーが完全放電するまで最大出力での地上試験を実施した。電気システムの負荷試験も繰り返したという。
同社は今回の飛行を、今後計画する成層圏飛行試験に向けた重要なマイルストーンと位置付ける。Helios Horizonのミゲル・イトゥルメンディ氏は「新バッテリー搭載後の機体の挙動と操縦性を確認することが、今回の飛行の主な目的だった」と述べた。
試験で使用したバッテリーパックは同社が自社で製作した。バッテリーセルは複数の供給元から商用購入可能な全固体電池を調達して用いた。同社は電池メーカーではなく、最終ユーザーの立場から技術を検証していると説明している。
バッテリー価格はなお高い。バッテリーパック1セットは約3万ドルで、従来のリチウムポリマー電池の3~4倍に上る。一方で同社は、生産規模の拡大や技術進展が進めば、価格は大幅に低下するとみている。
全固体電池が注目される最大の理由は、高いエネルギー密度だ。今回使用したセルのエネルギー密度は410Wh/kgで、従来使用していた260Wh/kgのセルを大きく上回った。
機体にはバッテリーを2個または4個搭載でき、1個当たりの重量は約80ポンド(約36kg)。総バッテリー重量は160~320ポンド(約72~145kg)で、各バッテリーの容量は14.8kWhとしている。
同社は全固体電池の利点として、高エネルギー密度に加え、急速充電と安全性を挙げる。現時点でも既存のリチウムイオン電池よりエネルギー密度は60~80%高く、今後2年以内にさらに約40%改善する可能性があるとみる。ほぼ放電した状態からでも、15分以内に約80%まで充電できるとしている。
安全性も大きな強みだ。全固体電池は高温環境や外部衝撃下でも、従来のリチウムイオン電池に比べて火災リスクが低いとされ、航空分野で特に関心を集めている。
一方、商用化に向けた課題は残る。Helios Horizonは、電動航空機向け全固体電池の商業認証が今後2~3年で可能になると期待するが、実際の時期は電池メーカー側の対応や規制当局の承認手続きに左右されるとしている。
業界では、今回の試験飛行は飛行距離や高度の記録そのものより、全固体電池を用いた電動航空機の実現可能性を実飛行で検証した点に意義があるとの受け止めがある。今後の追加試験で性能と安定性が裏付けられれば、全固体電池が次世代電動航空機の中核技術に浮上する可能性もある。