Strategyが、2022年以降で初めて実施したビットコイン売却の狙いを説明した。32BTCの売却は市場へのシグナルや内部手続きの検証が目的で、同社のビットコイン保有戦略を見直すものではないとしている。
Bitcoin Magazineが10日(現地時間)に報じたところによると、フォン・レCEOはCNBCのインタビューで、最近の32BTC売却について「市場へのシグナル」だったと述べた。保有戦略そのものは維持する考えもあらためて強調した。
フォン・レCEOは「市場の耐性を確かめたかった。社内プロセスも試した」と説明し、「すべてが正しく機能することを確認した」と語った。
売却は5月26日〜31日に実施した。Strategyは1BTC当たり7万7135ドルで32BTCを売却し、売却額は約250万ドルとなった。保有量全体に占める割合は0.004%にとどまるが、マイケル・セイラー会長がこれまで掲げてきた「売らない」方針に変化が生じたのではないかとの見方が広がっていた。
同社は今回の売却理由として、3点を挙げた。必要な場合に実際に売却できることを示すこと、売却執行に向けた内部システムが正常に機能するかを確認すること、取得単価の低い保有分を活用して税務上の損失を実現できる余地を確保することだ。Strategyはこれまで、1BTC当たり1万ドル台から12万5000ドル台まで幅広い価格帯でビットコインを購入してきた。
フォン・レCEOは、財務上の逼迫を背景にした売却との見方も否定した。「配当支払いのためにビットコインを売る必要はなかった。他の資金調達手段で対応できる」と説明した。売却代金はSTRCの永久優先株に対する分配金支払いに充てたという。
一方で、売却期間中も同社全体では買い増しが続いていた。32BTCを売却した期間に約1500BTCを追加購入し、6月1〜7日にも平均6万5332ドルで1550BTCを新たに取得した。市場では、こうした動きが投資家心理の安定を意識したものだとの受け止めも出ている。
投資家が問題視したのは、Strategyが保有ビットコインを事実上売却しないと約束していると受け止められていた点にある。フォン・レCEOは、普通株主、優先株主、債券保有者、ビットコイン保有者といった複数の利害関係者に対して説明責任があるとしたうえで、「普通株主にとって合理的であればビットコインを売却する」と述べた。機関投資家の反応は比較的落ち着いており、強い批判は主に個人投資家や永久保有を重視する支持層から出たという。
なお、売却は今回が初めてではない。Strategyは2022年12月にも704BTCを1BTC当たり1万6776ドルで売却し、2日後に810BTCを買い戻している。当時は、暗号資産にウォッシュセール規制が適用されない点を利用した税務上の損失実現取引だった。
マクロ環境についても言及した。フォン・レCEOは、ビットコインを取り巻く圧力要因として、米連邦準備制度理事会(Fed)の金利を巡る不確実性、地政学リスク、議会での暗号資産関連法案の審議遅延に伴う規制面の不透明感を挙げた。その一方で、ビットコインをインフレや「肥大化した政府」に対するヘッジ手段とみる長期見通しは維持した。
足元では、ビットコイン価格とStrategy株の双方に下押し圧力がかかっている。ビットコインは6万1600ドル前後で推移し、2025年10月に付けた過去最高値の12万6198ドルから40%超下落した。
現物ETFからは28億〜35億ドル規模の資金流出が生じ、1日で18億ドル規模の強制清算も発生した。MSTR株も今週は117〜127ドル近辺で推移し、52週高値の457ドルから約67%下落している。
Strategyのビットコイン保有量は5月末時点で合計84万5256BTC、取得原価総額は約639億7000万ドルに上る。同社は今回の売却について、保有戦略の転換ではなく、流動性と執行可能性の点検の色彩が強いと説明している。ただ、市場では今後の追加売却の有無と、株主利益とのバランスが引き続き焦点となりそうだ。