暗号資産市場で警戒感が強まっている。Bitcoinは6万ドル近辺まで下落し、米デジタル資産市場構造法案「CLARITY Act」の年内成立観測も後退した。Bitcoin現物ETFからの資金流出に加え、Strategyの売却報道やXRPの値動きも重なり、市場心理を冷やしている。
今週の最大の材料は、Bitcoinの下落だ。米国のBitcoin現物ETFは5月15日から6月3日まで13営業日連続で純流出となり、この間の流出額は累計で約43億7000万ドルに達した。直近1週間だけでも約14億1000万ドルが流出し、週間ベースで上場以来最悪の成績となった。
Bitcoinは一時6万ドルを下回り、約3カ月ぶりの安値を付けた。暗号資産の恐怖・強欲指数も11〜15の「極度の恐怖」水準まで低下した。市場では、中東情勢への警戒、米雇用指標の強さを受けた利下げ期待の後退、人工知能(AI)やハイテク株への資金シフトが相場の重荷になったとの見方が広がっている。
市場心理をさらに悪化させたのが、世界最大のBitcoin保有企業であるStrategy(旧MicroStrategy)の売却報道だ。5月末にBitcoinを32枚売却したと伝わり、投資家の不安が強まった。その後、同社は1550枚を再購入したが、「絶対に売らない」としてきた従来姿勢に変化が生じたとの受け止めは残っている。
Grayscale Researchは、Bitcoinが明確な底を固めるには、Strategy以外の新たな大口買い手が必要だと指摘した。あわせて、ETF資金流入の回復と、6万4000〜6万5000ドルの価格帯を上抜けられるかが反発のカギになると分析している。
制度面でも逆風が意識されている。米デジタル資産市場構造法案のCLARITY Actについて、年内成立の可能性が再び低下した。Galaxy Researchのリサーチ責任者、アレックス・ソン氏は、同法案が2026年内に成立する確率の見通しを75%から60%へ引き下げた。上院が対外情報監視法(FISA)関連案件の処理を優先する必要があり、審議日程が後ずれする可能性が高まったためという。
CLARITY Actは、デジタル資産の規制権限を米証券取引委員会(SEC)と米商品先物取引委員会(CFTC)の間で明確化する中核法案と位置付けられている。業界では、同法案の成立可否が、米国の暗号資産産業の制度整備を左右する分水嶺になるとの見方が強い。ただ、上院では倫理条項や不正資金対策に関する条項を巡り、民主・共和両党の隔たりがなお埋まっていない。
ホワイトハウスが早期処理を求める一方、JPモルガンは、8月の議会休会と11月の中間選挙を踏まえると、年内成立は難しくなるリスクが大きいとの見方を示した。業界の危機感も強まっており、Galaxy DigitalのCEO、マイク・ノボグラツ氏は「6月はCLARITY Actの月だ。今でなければ永遠に機会がないかもしれない」と訴えた。
一方、XRPは今週、1ドル水準が再び不安定化するとの懸念が出るなかでも、機関投資家や大口保有者の売りが限定的だった。高値から66%下落しても大口が持ち高を維持している点は、相場反発時の変動要因として注目されている。
Rippleを巡っては、元最高技術責任者(CTO)が、企業が今後、XRP Ledger上で株式やレポ、融資などをトークン化するようになるとの見通しを示した。Rippleが準備するステーブルコイン「RLUSD」についても、XRPの代替ではなく、エコシステム拡大の手段として機能し、機関投資家マネー流入の呼び水になり得るとの見方が出ている。
市場では、底入れを示唆する声と、なお一段安の可能性を警戒する声が交錯している。CryptoQuantの創業者は、BitcoinはStrategyとETFの存在によって2万ドル台までの下落を回避したとして、機関投資家資金の構造的な役割を強調した。
反発条件として挙げられている3つの要素のうち、すでに2つが満たされたとの分析もある。残る材料としては、韓国取引所でのいわゆる「キムチプレミアム」の回復と、Coinbaseの取引量増加が挙げられた。Strategy会長のマイケル・セイラー氏は、BitcoinはETFの枠を超え、銀行や信用市場へ広がるべきだと主張し、金融インフラへの組み込みを改めて促している。
このほか、地政学リスクが高まる局面でも、伝統的な安全資産とされる金価格が下落する場面がみられ、Bitcoinが真の「デジタルゴールド」として定着できるのかへの関心も改めて高まっている。分散型資産としての価値保存機能が問われている。