米上院のエリザベス・ウォーレン議員は6月10日、米商品先物取引委員会(CFTC)の暗号資産分野における執行縮小や人員削減、さらにGeminiやPolymarketを巡る判断の妥当性について、マイケル・セリック委員長に公開書簡で説明と関連資料の提出を求めた。
ブロックチェーンメディアのCoinPostによると、ウォーレン議員は書簡の中で、CFTCの執行体制が急速に弱まっている一方、特定企業に有利な判断が行われている可能性があると指摘した。
最大の論点として挙げたのは、執行件数の大幅な減少だ。CFTCは2024会計年度、58件の執行措置を通じて170億ドル超の制裁金を確保した。これに対し、トランプ政権発足後の12カ月では執行件数が11件に減少し、制裁金総額も10億ドル未満に縮小した。このうち、現政権が直接提訴した案件による制裁金は1000万ドルにも満たなかったという。
人員削減も問題視した。ロイターによれば、CFTCの人員は約25%減少した。6月1日には職員に対し、早期退職パッケージと追加退職金が提示されたとされる。ウォーレン議員は、規制対象が拡大する局面で監督人員が減っている点を問題だとした。
書簡では、トランプ一族と関係のある企業がCFTCの判断で便宜を受けている可能性にも言及した。キャロライン・ファム前CFTC委員長代行が、トランプ家とつながりのある企業に有利な方向で少なくとも3回介入したとするニューヨーク・タイムズ(NYT)の報道を引いた。
具体例としては、ドナルド・トランプ・ジュニアの投資ファンドが出資した後のPolymarketの申請承認、Geminiの優先審査、Crypto.comに関する規制対応を弱めた事例などを挙げた。
ウォーレン議員は、セリック委員長自身の判断についても疑問を呈した。セリック氏がGeminiに科された500万ドルの制裁金について、裁判所に取り消しを求めるよう指示したと主張した。
あわせて、Geminiの創業者であるウィンクルボス兄弟が、ドナルド・トランプ米大統領の選挙運動にそれぞれ100万ドル相当のビットコインを寄付していた経緯にも触れた。
一方、セリック氏は4月の下院農業委員会の公聴会で、人工知能(AI)ツールを活用した業務効率化を進めているとして、「CFTCはこれまでになく効率的かつ効果的に機能している」と述べていた。ウォーレン議員は、こうした説明と実際の執行状況に乖離があるとして、関連資料の提出を求めている。
今回の問題提起は、CFTCが暗号資産や予測市場への規制緩和を進める動きとも重なる。CFTCは5月29日、Kalshi傘下のKalshiEXによる「BTCPERP」を、米国内初の規制下に置かれた無期限先物として承認した。同日にはCoinbaseに対して、関連サービスの提供を可能にするノーアクションレターも発行している。
こうした業界向けの規制緩和と執行縮小が同時に進んでいることが、ウォーレン議員のいう「業界寄り」の姿勢への懸念を強めている。
書簡では、議会で審議中のClarity法案にも言及した。同法案が成立すれば、暗号資産市場の監督権限の相当部分がCFTCに移る可能性があるとした上で、予測市場事業者がスポーツ賭博やカジノゲームを州法や部族法の規制外で提供できるようにする分散型金融(DeFi)関連の抜け穴を、法案に盛り込もうとしたのかどうかもただした。
さらにウォーレン議員は、2026年初時点でKalshiとPolymarketの合算時価総額が約600億ドルに達し、2030年までに予測市場の取引規模が1兆ドルに膨らむ可能性があるとの試算もあるとして、監督の空白が広がるリスクに警鐘を鳴らした。
その上で、2025年1月20日以降のCFTC職員の異動・停職・再配置に関する全記録、PolymarketとGeminiに関するノーアクションレターの行政記録、Clarity法案に関連する予測市場業界とのあらゆるやり取りの記録を、6月18日までに提出するよう求めた。
今回の書簡は、CFTCが暗号資産と予測市場で規制緩和を進める中、監督能力の低下と利益相反の疑いを同時に突くものと受け止められている。監督権限の拡大論議が進む一方で、執行縮小と人員削減が並行している点は、今後の議会論争の主要な争点になる可能性がある。