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米スタートアップのOrbitalが、宇宙空間でAI向け計算基盤を構築する構想を掲げ、シードラウンドで500万ドル(約7億5000万円)を調達した。地上の電力制約や用地確保の問題を回避し、軌道上でAI推論を担うインフラの実現を目指す。2028年の初号機打ち上げを目標に、当面は衛星デモによる技術実証を進める。

TechCrunchが9日付で報じたところによると、OrbitalはAndreessen Horowitz(a16z)のスタートアップ向けアクセラレーター「Speedrun」を経て事業を始動した。

創業者は、電動キックボードのシェアリングサービスSpinの共同創業者であるEuwyn Poon氏。2017年にSpinを立ち上げ、翌年にFordへ売却した経歴を持つ。

Poon氏はFord退社後、新たな事業機会を模索するなかで、急拡大するAIインフラ市場に着目し、宇宙データセンターの構想に行き着いたという。

Orbitalが狙うのは、地上で急増するAI計算需要の一部を宇宙へ移すことだ。宇宙空間では太陽光発電を安定確保しやすく、地上データセンターの建設で課題となる環境規制や許認可の負担も比較的小さいとみている。

一方、現時点で最大の障害となっているのは打ち上げコストだ。Poon氏はインタビューで、事業の本格展開にはSpaceXの次世代超大型ロケット「Starship」の商用化が前提になるとの認識を示した。

同氏は「Starshipの運用が始まればフルスケールへ拡張できるが、現行のFalcon 9の打ち上げコストでは採算が取れない」と説明。当面は大規模なインフラ整備より、要素技術の検証を優先する方針だ。

ロサンゼルスを拠点とするチームは約12人。Amazonの低軌道衛星事業、SpaceX、Northrop Grummanの出身者で構成する。現在は提携先企業の衛星にNVIDIAのBlackwellチップを搭載し、放射線遮蔽や熱管理の技術を検証するデモ飛行を準備している。

Orbitalは2028年に、データ処理用宇宙船の初号機を打ち上げる計画だ。機体には、NVIDIAの次世代宇宙向けAIチップ「Space-1 Vera Rubin」クラスのGPUを搭載する予定としている。

その後は衛星を1機ずつ追加し、AI推論を実行しながら段階的に収益モデルを築く考えだ。軌道上でGPUを運用しようとする競合のStarcloudに近い手法とみられる。

長期的には、衛星1万機を配備し、総計1ギガワット(GW)の分散型AI計算ネットワークを構築する構想を掲げる。衛星1機当たり約100キロワット(kW)の電力を確保し、大規模なAIワークロードを処理する計画だ。

宇宙データセンターを巡る競争も動き始めている。Cowboy Space Companyは自社ロケットの開発に着手しており、Jeff Bezos氏のBlue Originも「New Glenn」ロケットを活用した宇宙データセンター計画を公表している。

Orbitalは、今後は複数の事業者が併存し得るとみる。Poon氏は「AIワークロードの種類やデータセンターの設計、運用モデルによって、市場はいくつかの領域に分かれる可能性がある」と語った。

またPoon氏は、Ford退社後にNVIDIAのA100 GPUを使ってオープンウェイトのAIモデルサービスを運営した経験にも触れ、「AI時代には、計算能力そのものが重要な資産になる」と強調した。

投資家の見方も、以前より長期プロジェクトに前向きになっているようだ。a16zのパートナーであるAndrew Chen氏は、Poon氏が過去に100以上の都市で25万台規模の電動キックボード網を構築した実績を高く評価した。

Chen氏は「こうした事業は完成まで10年以上を要し、数十億ドル規模の資本が必要になる可能性がある。それでも現在のベンチャーエコシステムは、以前よりはるかに長い時間軸を受け入れる準備ができている」と述べた。

業界では、Orbitalの成否はStarshipの商用化と、初期の技術実証の結果に左右されるとの見方が出ている。宇宙でAI計算を担う構想は、もはや1社だけの発想ではない。ただ、打ち上げコストが大幅に下がるまでは、当面は限定的な実験と検証が先行するとみられる。

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