写真=Reve AI。大型IPOが相次ぐ中、ビットコインには資金流出圧力が意識されている

OpenAIが9月の上場を視野に、米証券取引委員会(SEC)へ非公開でS-1を提出した。SpaceXやAnthropicも大型IPOの準備を進めており、市場ではAI関連の上場ラッシュがビットコイン現物ETFの資金フローに与える影響に関心が集まっている。

ブロックチェーンメディアのCryptoSlateが9日(現地時間)に報じたところによると、OpenAIは企業価値8520億〜1兆ドルを目指している。今回の動きは単なる個別企業の上場にとどまらず、AIを軸にした世界的な資本再編の一環と受け止められている。

Goldman Sachsは、2026年の米IPOによる調達額が過去最大の1600億ドルに達する可能性があるとみている。SpaceXは企業価値1兆7500億ドルを前提に、750億ドルの調達を進めている。

Anthropicも5月末に9650億ドル規模の資金調達を行った後、非公開で上場手続きに入ったとされる。3社に関連する上場待機資金は、2025年の米IPO市場全体の需要を最大4倍上回る水準との見方もある。

市場が注目するのは、こうした巨額の資金需要と、これまでビットコイン現物ETFに流入してきた機関投資家マネーの重なりだ。SpaceXやOpenAIといった大型IPOに振り向けられる資金は、ビットコインを12万6000ドルまで押し上げたETF流入資金と同じ性格を持つ可能性があるという。

実際、投資マネーは足元でAI・半導体株に向かっている。直近1年間ではAI・半導体株が約170%上昇した一方、ビットコインは同期間に約40%下落した。

3日にはフィラデルフィア半導体株指数が約5.9%上昇したのに対し、ビットコインは1日で約4%下落した。ビットコイン現物ETFからは6月第1週だけで17億ドル超が流出。それに先立つ13営業日連続の流出局面では、計44億ドルが流出していた。

資金移動が最も目立ったのは5月28日だ。BlackRockのIBITは約5億2800万ドルの純流出を記録し、同ファンドとしては過去2番目の大きさとなる1日当たりの流出となった。

当時は、機関投資家が高値圏にあったAI・半導体株へ資金を移したとの分析が出ていた。ビットコイン現物ETFからの流出が単なる利益確定ではなく、ポートフォリオの組み替えによるものだとすれば、今後の大型IPO日程は新たな資金の向かい先になり得る。

さらに、AI企業の上場が本格化すれば、これまでNVIDIAやMicrosoft、Alphabetを通じて間接的にAIへ投資していた資金が、新規上場銘柄へ直接向かう可能性もある。ビットコインは機関投資家にとって流動性の高いハイベータ資産として組み入れられてきたが、四半期ごとの業績開示を伴うAI新規上場株が、その役割を代替する可能性があるとの指摘もある。

もっとも、このIPOラッシュが直ちにビットコインの悪材料になると断定するのは早計だ。Goldman Sachsが想定するような超大型IPOが成立するには、株式市場に大規模な供給を吸収できるだけのリスク選好が必要になる。

SpaceXの750億ドル、OpenAIの1兆ドル規模を市場が無理なく消化できるなら、それ自体が投資家のリスク許容度の回復を示す。そうした局面では、ビットコインもリスク資産全体への資金回帰の恩恵を受ける可能性がある。

ビットコインと米国株の連動性は足元で一段と高まっている。ビットコイン現物ETFの承認や、StrategyのNasdaq100組み入れといった機関投資家関連のイベントを経て、ビットコインとNasdaq100、S&P500の相関係数は2024年に0.87まで上昇した。

IPO日程が順調に進み、機関投資家需要の強さが確認されれば、ビットコイン現物ETFの資金フローが再び純流入に転じる可能性もある。

一方で、不確定要素も残る。足元のハイテク株業績は堅調とされるが、OpenAIは売上高1ドル当たり1.22ドルを消費する構造のまま、1兆ドル評価での上場を進めている。

金利ショックでAI関連IPOのバリュエーションが見直されれば、ビットコインも同時に打撃を受ける可能性がある。Goldman Sachsも、ソフトウェア株へのエクスポージャーとボラティリティを、1600億ドル規模のIPO予測に対するリスク要因として挙げている。

今後の焦点は、IPO需要が拡大する局面でもビットコイン現物ETFの資金が純流入に戻るかどうかだ。あわせて、Nasdaqの強さがAI主導銘柄にとどまらず市場全体へ広がるか、ビットコインが30日移動平均の7万5685ドルと200日移動平均の7万8840ドルを回復できるかも注目点となる。加えて、米連邦準備制度理事会(FRB)の金利スタンスが安定し、高バリュエーションのAI上場株が市場全体のリスク回避を招かないかも重要だ。

米マネー・マーケット・ファンド(MMF)残高は約8兆ドルと推計される。SpaceXの750億ドル調達はその約1%に相当し、流動性の規模だけをみれば株式と暗号資産の双方を同時に吸収できる余地はある。ただ、ビットコインは年初来で33%下落し、ETF資金も通年ベースでは純流出が続いているという。

予測市場プラットフォームのKalshiは、ビットコインが2027年1月までに10万ドルを上回る確率を21%と織り込んでいる。AI IPOの波は、ビットコインから資金を奪う圧力にも、リスク選好を呼び戻す触媒にもなり得る。

大型IPOの相次ぐ局面は、ビットコインにとってプラスとマイナスの両面を持つ。ウォール街の資金が新規上場株へ向かえばビットコイン現物ETFの重しとなる一方、超大型IPOをこなせるほどリスク選好が回復すれば、ビットコインにも追い風となる可能性がある。今後は、ビットコイン現物ETFが純流入へ戻るか、AI主導のリスク選好が暗号資産市場まで広がるかが焦点となる。

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