オランダのアムステルダム・スキポール空港は、航空機の地上移動時に発生する排出量の削減に向け、電動牽引車「TaxiBot」の実証運用を始めた。APU(補助動力装置)や主エンジンを使わずに機体を移動させられるのが特徴で、同空港は地上移動に伴う排出量を80%以上削減できると見込んでいる。
米電気自動車メディアElectrekが9日(現地時間)に伝えた。スキポール空港は電動式の航空機牽引システムであるTaxiBotを導入し、実運用環境で性能の検証を進める。
TaxiBotは、航空機を駐機場から滑走路まで移動させるための特殊車両だ。APUや主エンジンを稼働させなくても機体を牽引でき、あわせて電力供給にも対応するよう設計されている。
空港では通常、ディーゼル牽引車を使うか、航空機側のエンジンとAPUを低出力で動かしながら滑走路まで移動する。この方式では燃料を消費し、排気ガスや騒音も発生する。これに対しTaxiBotは、バッテリー電力で機体を移動させながら、パイロットが操縦権を維持したまま滑走路まで進めるよう支援する。
Royal Schiphol Groupで人事・移行部門の責任者を務めるエスメ・ファルク氏は、「TaxiBotは、駐機場での排出ガスと騒音を減らす有効な手段だ。より健康でクリーンな作業環境の整備につながり、次世代空港づくりにも貢献する」とコメントした。
TaxiBotは、Smart Airport Systems、TLD、Israel Aerospace Industries(IAI)が共同開発した。従来のトーイング車と異なり、機体の移動に必要な電力を供給しつつ、パイロットが引き続き航空機を直接制御できる点が特徴という。これにより、乗客は機体尾部のAPUから生じる継続的な騒音の影響を受けにくくなり、地上作業員も排気ガスへの曝露を減らせるとしている。
航空会社も燃料削減効果に注目している。easyJetでオランダ・スカンディナビア地域責任者を務めるウィリアム・フェット氏は、「TaxiBotは、燃料消費や炭素排出、地上騒音をすぐに減らせる技術だ。Menzies Aviationなどの地上支援パートナーとの協力によって実現した」と述べた。
TaxiBotはすでにAirbus A320neo向けの認証を取得済みだ。スキポール空港は今後、Boeing 737向けの認証取得も進めるほか、Embraer機やKLM Cityhopper、Transaviaなど複数の航空会社と連携し、適用範囲を広げる計画だ。年末までに電動TaxiBotを3台追加導入する予定も明らかにした。
業界では、TaxiBotが空港の脱炭素戦略を支える中核技術の1つになり得るとの見方が出ている。航空機エンジンやAPUの使用時間を減らせれば、燃料費の抑制に加え、整備負担の軽減も期待できるためだ。大容量バッテリーによる移動式の電力供給が可能な点も、地上運用の効率化につながると評価されている。
スキポール空港は今回の実証運用を通じ、電動化した地上運用機材の実効性を見極める方針だ。機種別認証の拡大と追加導入も予定しており、電動牽引車が空港の地上運用における新たな標準となるか注目される。