CoinSharesは9日、ビットコインの軟調は構造的な変化ではなく、市場センチメントの悪化が主因だとの見方を示した。足元では資金流出が続いているものの、価格が6万ドル近辺(約900万円)からさらに大きく崩れる可能性は低いとみている。
CoinPostなどによると、同社はまず資金フローの動向を整理した。5日までの約4週間で、ETFを含むデジタル資産投資商品全体から約58億ドル(約8700億円)が純流出した。週間ベースの流出ペースとしては、この1年で最も速い水準だったという。
それでも、デジタル資産市場全体はおおむね横ばい圏を維持している。同社は、現在の軟調地合いをもって市場全体の長期的な価値が損なわれたと判断するのは時期尚早だと指摘した。
センチメントを直接冷やした要因としては、イラン情勢を挙げた。米国とイランの和平交渉が想定以上に難航していることが明らかになり、地政学的な不確実性の高まりがリスク資産への選好を弱めていると分析した。
同社は、こうした情勢がFedの政策見通しにも影響しているとみる。2カ月前には2026年に1〜2回の利下げが織り込まれていたが、現在は約0.4%の利上げが見込まれていると説明した。
AI分野への資金集中も、ビットコインの重しになっているという。投資マネーがAI関連資産に向かうことで、ビットコインなど他の資産への資金配分が相対的に細っているためだ。
もっとも、AI関連企業が大規模な設備投資に見合う収益を実際に生み出せるかどうかは見極めが必要だとして、同分野のバブル懸念にも言及した。
市場心理に影響した別の要因として、Strategyによるビットコイン売却も取り上げた。CoinSharesは、世界最大のビットコイン保有企業であるStrategyによる32BTCの売却が、投資家心理の重しになったと分析した。
ただ、最悪のシナリオを想定しても、その規模は長期休眠状態にあるサトシ・ナカモト保有分のように市場全体へ強い衝撃を与える水準ではないとした。その後、Strategyはビットコインを追加購入したことを明らかにしている。
価格動向についてCoinSharesは、ビットコインが6万ドル近辺からさらに大幅に下押しする可能性は低いとみている。市場センチメントは悪化しているものの、長期的な価値は毀損していないという判断だ。
一方で、本格的な上昇トレンドへの転換はなお容易ではないとも指摘した。イラン情勢が落ち着き、Fedの金利見通しに変化が生じるまでは、力強い上昇は見込みにくいとしている。
当面の注目点は主要中銀の会合だ。CoinSharesは、ECBとFedの金融政策決定会合を重要イベントに挙げた。金利パスを巡る市場の見方が改めて変化すれば、ビットコイン相場にも直接影響する可能性があるという。
同社はまた、今後の市場テーマとしてトークン化にも注目している。ステーブルコインの供給量がすでに増加するなか、米国の暗号資産市場構造法案であるCLARITY Actが制度化されれば、トークン化の拡大ペースが一段と速まる可能性があるとした。