Apple株は9日、年次開発者会議「WWDC」で新たなAI戦略を示した後、3%下落した。市場では発表内容そのものよりも、新Siriの投入時期や地域・言語展開のスピードを見極めようとする動きが強まった。
米CNBCによると、投資家が注目したのはSiri関連の新機能やApple Intelligenceの発表自体ではなく、実際の提供開始時期と普及の進み方だった。
Appleは、iPhoneやMacで開発者が自社のAI機能を利用できる新たなフレームワークを公開した。あわせて、LLMを基盤とする新Siriを発表。GoogleとNVIDIAの支援を受け、最先端モデルに匹敵するクラウドAIモデルも活用していると明らかにした。
ただ、投資家は発表直後に売りで反応した。市場では、株価が2月以降で最大の下げとなる可能性も意識された。新機能の方向性は示したものの、短期的に業績や端末販売を押し上げる材料としては力不足との受け止めが広がったとみられる。
もっとも、証券各社の評価は総じて前向きだった。とりわけSiriの改善方針には好感が広がったが、市場予想を大きく上回る革新性は乏しく、中核機能の商用化スケジュールがなお見えにくい点を課題に挙げる声も出た。
Bairdのウィリアム・パワー氏は、Appleがパーソナライズや文脈理解を軸としたAI活用の方向性を示した一方、新Siriについては今年下期のベータ公開計画にとどまり、正式提供の時期は示していないと指摘した。こうした不透明感が取引時間中の売り圧力につながったと分析している。
収益化の道筋も焦点となった。Goldman Sachsのマイケル・ン氏は、画像生成など一部機能が高性能サーバー基盤のモデルに依存するため、1日当たりの利用量に上限が設けられると説明。そのうえで、iCloud+の複数の料金プランを通じて追加利用枠を提供できれば、Apple Intelligenceの直接的な収益化も可能になるとの見方を示した。
ハードウェア販売への波及を巡っては見方が分かれた。Goldman Sachsは、AI機能がApple製デバイスの買い替え需要を刺激する可能性があると予想した。一方、UBSのデービッド・ボグト氏は、新機能がiPhone需要を左右する決定打にはならないとして、従来の販売見通しを据え置いた。複数の注目すべきAI発表があっても、新サービスがiPhone需要を大きく押し上げることはないとの見立てだ。
地域ごとの提供制約にも投資家の視線が集まった。JPモルガンのサミク・チャタジー氏は、Appleが規制上の問題を理由に、中国と欧州でAI機能の導入が遅れると説明した点に言及した。当初の提供言語が英語に限られることも論点として挙げた。同氏は、米国で今秋に新Siriが投入されれば年末商戦の追い風になり得る一方、その後に他地域・他言語へどこまで速く展開できるかが投資家の最大の関心事になるとみている。
今回Appleが示したのは、オンデバイスAIとクラウドAIを組み合わせる戦略だ。開発者への開放、新Siriへの刷新、サブスクリプションを軸とした収益化まで大枠の青写真は示したものの、市場は商用化日程や適用範囲について、より具体的な計画を求めている。AI戦略の成否は、正式提供の時期、地域展開、言語対応、そして実際に買い替え需要へつながるかどうかに左右されるとの見方が出ている。