米国で拡大するAIインフラ投資が、ビットコイン市場には逆風になりつつある。AI関連の巨額投資が物価を押し上げ、米連邦準備制度理事会(FRB)の利下げ時期を遅らせるとの見方が強まっているためだ。流動性改善を支えにした暗号資産市場の上昇シナリオには不透明感が広がっている。
CryptoSlateが6日(現地時間)に報じたところによると、Goldman Sachsは2026年のAI関連資本支出が8000億ドル近くに達すると予測した。市場調査会社TrendForceも、主要クラウド事業者9社による2026年の投資額が8300億ドル規模になると見積もっている。
市場が注目しているのは、AI投資が単なるテック業界の追い風にとどまらず、インフレ圧力として意識され始めている点だ。投資資金はサーバーや半導体、メモリーだけでなく、土地、鉄鋼、変圧器、銅配線、電力設備、冷却インフラ、専門建設人材にも広がっている。
Goldman Sachsは、こうしたAI需要が2026年の米企業の設備投資増加率を7.8%押し上げ、増加分のうち3.3ポイントを単独で寄与すると分析した。
焦点は、需要が供給制約の強い分野に集中していることだ。なかでも電力は最大のボトルネックとみられている。
FRBのリサ・クック理事は最近の講演で、この1年間に電気料金と水道料金がそれぞれ約5%上昇したほか、半導体や先端装置、ソフトウェアの価格も上昇基調にあると説明した。専門性の高い建設人材の賃金にも上昇圧力がかかっているという。
ジェローム・パウエルFRB議長も、データセンター建設ブームが幅広い財・サービス価格を押し上げていると指摘した。AIインフラ拡大に伴う需要増が、短期的に物価を刺激しているとの認識を示した格好だ。
Appleのティム・クック最高経営責任者(CEO)も5月の講演で、AIを背景とする投資需要の拡大が追加的な価格ショックを招く可能性があると警告した。
こうした動きは、ビットコイン市場が期待してきた環境と相反する。今年の暗号資産市場では、インフレの鈍化と利下げを背景に流動性が改善し、リスク資産選好が持ち直すとの見方が広がっていた。
ただ、AI投資ブームが物価上昇圧力を強めれば、FRBは政策金利の引き下げに慎重にならざるを得ない。市場では、16〜17日に開く連邦公開市場委員会(FOMC)で金利が据え置かれるとの見方が9割を超えている。
ビットコイン相場も上値の重い展開が続く。足元では6万2000ドルを下回る水準まで下落し、昨年の高値から大きく調整している。直近1週間の下落率は13%を超えた。
資金フローも悪化している。ビットコイン現物ETFでは11営業日連続で純流出が続き、流出額は約34億5000万ドルに達した。2024年の上場以来、最長の解約局面として記録された。
市場では、この資金の相当部分がAIや半導体関連株に向かったとの見方も出ている。
もっとも、FRB内でもAI投資の影響を巡る見方は一様ではない。元FRB理事のケビン・ウォーシュ氏は、AIが長期的には生産性を高め、ディスインフレ効果をもたらし得ると評価した。
一方、マイケル・バーFRB理事は、AI投資の拡大が直ちに利下げを正当化する材料にはならないとの立場を示した。
結局のところ、市場の関心はAI産業そのものの成長よりも、インフラ整備コストと物価圧力がどの程度の期間続くかに移っている。AI投資ブームはテクノロジー株には追い風となる一方、ビットコインが期待してきた流動性改善を遅らせる要因になり得るとの見方が強まっている。