中国の裁判所は、暗号資産の取引規制とは切り離して、ビットコインを刑法上の「財産」と認定した。写真=Shutterstock

中国・青島市李滄区人民法院は、シードフレーズを悪用して他人のウォレットから107BTCを不正に移転した被告に対し、懲役10年9カ月と罰金10万人民元の判決を言い渡した。暗号資産取引が厳しく規制される中国で、ビットコインを刑法上保護される「財産」と認め、窃盗罪の対象になり得るとの判断を示した点が注目される。

ブロックチェーンメディアのCointelegraphが8日に報じた。

事件は2023年7月に起きた。被害者のポン氏は、保有していた117BTCを換金するため、過去に取引を手伝ったことのある知人のチャン被告に協力を依頼した。

その際、ポン氏がウォレット設定のために12語のシードフレーズを書き留める様子を、チャン被告が目にしていたとされる。

検察によると、チャン被告は当時、12語のうち11語を記憶し、その後、残る1語を推測してウォレットにアクセスした。被害者のウォレットから107BTCを、自らが管理するアドレスに移したという。

捜査当局は被害届の受理後、オンチェーン上の取引記録を追跡し、送金経路がチャン被告につながると特定した。裁判所は、チャン被告が奪取したビットコインの一部を換金し、9万7000ドル超を得たと認定した。

これに対しチャン被告は公判で、ビットコインを盗んだのではなく、資産を保全する目的で移しただけだと主張した。投資の過程で損失が発生し、実質的な利益は得ていないとも訴えた。

ただ、検察は電子記録と取引履歴を根拠に、実際に換金して収益を得ていたと判断。裁判所もこの主張を採用した。

本件の最大の争点は、ビットコインの法的性格をどう位置付けるかにあった。中国では暗号資産の取引やマイニングが強く規制されている一方、検察はビットコインが刑法上保護される財産に当たり、窃盗罪の客体になり得ると主張していた。

裁判所もこれを認め、有罪判決を言い渡した。

今回の判決は、暗号資産取引そのものを合法化するものではない。ただ、個人が保有するデジタル資産について、刑事法の枠組みで財産権を保護する姿勢を示した事例と受け止められている。取引が制限される資産であっても、無断で移転・奪取すれば窃盗罪として処罰し得ることを示した形だ。

一方で、この事件はウォレットのセキュリティ対策の重要性も改めて浮き彫りにした。Bitget Walletのアルビン・カン最高執行責任者(COO)は、復旧フレーズは技術的に安全でも、周囲に露出すれば深刻なセキュリティリスクになり得ると指摘した。

カン氏は「一瞬の露出でも露出に変わりはない」として、シードフレーズの入力や記録の際には、周囲の環境まで含めて厳格に管理すべきだと強調した。

業界では今回の判決について、中国の司法がデジタル資産の窃盗をどう判断するかを示した事例であると同時に、個人ウォレットにおけるシードフレーズ管理の重要性を改めて示したケースだとの見方が出ている。

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