AMDは、今後5年間で英国に20億ドルを投資し、スーパーコンピューター2基を整備する。英国内のAI研究基盤を強化するとともに、核融合研究向けの計算資源も拡充する方針だ。
AMDはLondon Tech Weekで、英国向けの投資計画を明らかにした。投資資金は、英国のAI研究プログラムやスーパーコンピューターの構築に充てる。
1基目は、ケンブリッジ大学に設置する「Zenith」で、2基目の「Sunrise」は、英国原子力公社(UKAEA)と共同で開発する。
Sunriseは、核融合研究に特化したスーパーコンピューターとして開発する。核融合は、太陽内部で起きている反応を地上で再現し発電に活用する次世代エネルギー技術で、実用化されれば、二酸化炭素を排出しない大規模なクリーンエネルギー源になると期待されている。AMDは、Sunriseが完成すれば、核融合研究向けでは世界最高水準の性能になるとしている。
AMDの最高経営責任者(CEO)リサ・スー氏は、今回の投資によって、英国のソブリンAIの発展に必要な計算資源へのアクセスを高める考えを示した。単なるハードウェア供給にとどまらず、英国のAI研究力や産業基盤の強化につなげる狙いがある。
今回の発表は、英国政府のAI産業育成策とも歩調を合わせる。同日、キア・スターマー英首相はLondon Tech Weekで、英スタートアップが開発したAIチップの政府調達を始めると明らかにした。公共調達を通じて国内の技術企業を支援し、国家レベルのAI能力を確保する方針で、約4億ポンドの予算も充てる。
市場では、AMDの英国投資を、半導体株が調整色を強めるなかでも成長投資を継続する姿勢の表れとみる向きがある。AMD株は6日、1営業日で11%近く下落したが、会社固有の材料というより、Broadcomの決算発表を受けてAI半導体関連銘柄全体に売りが広がった影響が大きかったとされる。その後、AMD株は寄り付き前取引で約2%上昇し、下げの一部を取り戻した。
KKM FinancialのCEO、ジェフ・キルバーグ氏は、半導体株には過熱感がある一方で、AI拡大の流れ自体は維持されていると述べた。
業績面も、こうした拡張戦略を支える材料となっている。AMDの2026年1〜3月期の売上高は102億ドルで、前年同期比38%増。純利益は同95%増だった。
成長をけん引したのはデータセンター事業だ。売上高は58億ドルと前年同期比57%増で、全社売上高の過半を占めた。クライアント・ゲーミング部門は36億ドルで23%増、組み込み部門も8億7300万ドルと増収を確保した。
AMDは大口顧客の開拓も進めている。年初にはMetaと600億ドル規模のチップ供給契約を結んだとされ、その過程でMetaがAMD株を取得することになったという。OpenAIも昨年、これに類似した契約を結び、最大10%の株式を確保できる仕組みとされる。
AMDの時価総額は約8500億ドル。株価が2割弱上昇すれば、時価総額1兆ドルが視野に入る水準にある。英国投資とデータセンター事業の成長が、次の企業価値押し上げ要因となるか注目される。