写真=Factorial Energy提供

米全固体電池スタートアップのFactorial Energyは8日(現地時間)、SPAC(特別買収目的会社)との統合を経てNASDAQに上場した。調達資金は全固体電池の量産体制整備と商用化に充てる。対象分野はEVにとどまらず、防衛、航空宇宙、ロボティクスなどにも広げる方針だ。

同社はCartesian Growth Corp IIIとの合併を完了し、同日からNASDAQで取引を開始した。ティッカーシンボルは「FAC」と「FACWW」。

合併後の企業価値は約13億ドル。今回の取引で約1億1000万ドルを調達し、次世代電池の商用化と生産拡大に充当する。資金の用途はEV向けに加え、防衛、航空宇宙、ハイパースケールデータセンター、ロボティクス分野にも及ぶ。

Factorial Energyは、全固体電池技術を実車環境で検証してきた点でも注目を集めている。2025年にはMercedes-Benzと共同開発した全固体電池セルをEQSベースの試験車両に搭載し、1回の充電で745マイル(約1200km)を走行したと公表した。

Mercedes-Benzは当時、車両のサイズと重量を従来モデルと同程度に保ちながら、利用可能なエネルギー量を約25%増やしたと説明した。マルクス・シェーファー最高技術責任者(CTO)は、この技術がEV市場の「ゲームチェンジャー」になり得るとの見方を示していた。

現在、Factorial EnergyはMercedes-Benzに加え、Hyundai Motor、Kia、Stellantisと次世代全固体電池の開発を進めている。2026年初めにはKarma Automotiveとともに、米国初の商用全固体電池プログラムを開始し、商用化に向けた準備を進めている。

中核技術として掲げるのが、独自開発の電解質技術「FEST(Factorial Electrolyte System Technology)」だ。同社によると、従来のリチウムイオン電池に比べてエネルギー密度を高め、急速充電や航続距離の延伸につながるという。

Stellantisは2025年の試験で、Factorial Energyの77Ah全固体電池セルが、375Wh/kgのエネルギー密度を維持しながら600回超の充放電サイクルを記録したと発表した。充電時間は10%から90%超まで約18分に短縮され、最大4Cの放電性能にも対応するとしている。

バッテリーパック設計でも優位性を打ち出す。Factorial Energyは、同社の全固体電池パックについて、リチウムイオン電池と比べて体積を約3分の1に抑え、重量を最大40%軽減できると説明する。これにより航続距離を50%超伸ばし、600マイル(約965km)超を確保できるとしている。

シユ・ホアン最高経営責任者(CEO)は「現実の環境で全固体電池を大規模に実装することが目標だ」とした上で、「EVだけでなく、ドローンやロボティクス、次世代エネルギーシステムへと適用範囲を広げていく」と述べた。

業界では今回のNASDAQ上場について、全固体電池が研究開発段階から量産・商用化の局面へ移りつつあることを示す動きと受け止める向きがある。実車での検証を進めてきたFactorial Energyが、次世代電池の競争でどこまで事業化を進められるかが注目される。

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