SpaceXがIPOを検討する背景として、資金需要の拡大と上場後も維持されるマスク氏の強い支配力が注目されている。イーロン・マスク氏は、上場後も議決権の85%を握る可能性があるという。
米電気自動車メディアのCleanTechnicaが7日(現地時間)に報じた。これによると、SpaceXは資金流出の拡大を受け、外部資金の調達ニーズが高まっている。
マスク氏はこれまで、公開市場からの圧力に慎重な姿勢を示してきた。2023年にはSpaceXについて、「四半期業績や株価を気にする必要がない」としたうえで、「安定的で予測可能な収益の流れが生まれるまでは、上場する意味はない」と述べたとされる。
2013年に従業員に送ったメールでも、火星輸送システムが整うまでは上場したくないとの考えを示していた。
一方、足元では財務負担が急速に重くなっている。2024年は7億9100万ドル(約1187億円)の利益を計上したが、2025年は約49億ドル(約7350億円)の損失に転落した。
2026年第1四半期の損失も約43億ドル(約6450億円)に達した。累積損失は約410億ドル(約6兆1500億円)規模とされる。
売上高は前年から33%増の187億ドル(約2兆8050億円)に拡大した。2026年第1四半期も41億ドル(約6150億円)から47億ドル(約7050億円)へ増加したが、収益性はなお低い水準にとどまっているという。
IPO検討の背景には、事業構造の変化もある。Starlinkは利益を生み出している一方で、その他の事業部門では大規模な資金消費が続いている。
さらに2026年には、人工知能(AI)スタートアップのxAIを傘下に組み入れたことで、負債負担も一段と重くなったとされる。
市場の関心は、上場後の支配構造にも向かう。マスク氏が議決権の85%を維持すれば、SpaceXは上場後も実質的に同氏の単独支配が続く構図となる。
このため、外部株主が経営に実質的に関与できる余地は限られるとの見方も出ている。
収益性への懸念も残る。Starlinkの利用者は増えているものの、クリス・バニー氏(CFA)の集計では、利用者当たりの平均売上高は2023年の月99ドル(約1万4850円)前後から、2026年初めには60ドル台半ばまで低下したという。
利用者拡大に向けて料金引き下げの動きが進むなか、Amazonや中国系の衛星通信網との競争が本格化すれば、収益性への圧力はさらに強まる可能性がある。
マスク氏は過去、Teslaについて、事業存続のため上場が不可避だったと述べたことがある。今回も、SpaceXが長期プロジェクトを継続するためには、公開市場で大規模な資金を調達する局面に入ったとの見方が強調されている。
もっとも、上場が直ちに財務負担の解消につながるかは不透明だ。売上高は拡大している一方で、大規模投資と赤字も同時に膨らんでおり、上場後もマスク氏を中心とする支配構造が維持される可能性が高い。
SpaceXのIPOを巡る焦点は大きく2つある。Starlinkと大型ロケット開発が実際のキャッシュ創出力につながるのか。もう一つは、公開企業となった後もマスク氏の強い統制体制が投資家に受け入れられるのかという点だ。