米議会で審議が進む暗号資産関連法案「CLARITY法」を巡り、Galaxy Digitalは2026年の成立見通しを75%から60%へ引き下げた。支持の後退というより、上院の審議日程が想定以上に圧迫されていることに加え、倫理規定やマネーロンダリング対策、ステーブルコインの報酬設計を巡る論点整理が長引いているためだ。
CryptoSlateが7日(現地時間)に報じた。Galaxy Digitalは、法案審議を取り巻く足元の政治・立法環境を踏まえ、従来の見方を下方修正した。
CLARITY法は5月14日、上院銀行委員会を15対9で通過した。ただ、その後も本会議での審議と採決、修正案の処理、他委員会案とのすり合わせ、下院手続き、大統領署名など、成立までにはなお複数の段階を残している。
Galaxy Digitalは、見通し引き下げの主因として支持基盤の揺らぎではなく、時間不足を挙げた。リサーチ部門トップのアレックス・ソンは、上院で8月休会前に審議に充てられる日数が限られていると指摘した。
法案の上院通過には60票の確保が必要となる。本会議での討論や修正案対応に加え、上院農業委員会がまとめる文案との調整も残る。ジョン・スーン上院院内総務が7月中に本会議日程を確保できれば、前進の可能性は高まるという。
もっとも、この2週間で上院日程は一段と窮屈になった。予算を巡る与野党の攻防に加え、移民・税関執行局(ICE)や国境警備を巡る案件が本会議の時間を圧迫している。
さらに、外国情報監視法(FISA)第702条の再承認手続きも、47対52の手続き採決で前に進まなかった。6月12日の期限を控え、別の立法課題が再び優先事項として浮上している。
政治面の争点も残る。ルーベン・ガジェゴ上院議員に近い民主党勢力は、利益相反に関する倫理規定の強化を求めている。
マネーロンダリング対策を重視する陣営は、資金洗浄や制裁回避のリスクに対する安全措置をさらに強めるべきだとの立場だ。一方で、上院銀行委員会と農業委員会がそれぞれまとめた修正案を単一案に統合する作業も終わっていない。
ステーブルコインを巡る銀行業界と暗号資産業界の対立も、法案前進の重しとなっている。最大の焦点は、ステーブルコインの保有残高に利息類似の報酬を認めるかどうかだ。
銀行業界は、デジタルドルに利回りに近い報酬が認められれば、当座預金や普通預金から資金が流出しかねない一方、規制銀行に課されるルールは回避されると主張する。
米国銀行協会(ABA)が後援した調査も、こうした懸念を後押しした。同調査では、ステーブルコインに利息類似の報酬を認めた場合に生じ得るリスクから、地域向け融資や金融システムを守ることに消費者の強い支持が集まったとしている。
これに対し、暗号資産業界は、決済や取引、ロイヤルティープログラム、取引インセンティブと連動した報酬は、決済イノベーションの促進と利用者拡大に不可欠だと反論している。
現行案は、単純な保有だけで得られる利息類似の報酬は禁じる一方、利用や取引にひも付く報酬は認める方向で設計されている。この線引きは、ステーブルコインを決済・清算手段にとどめるのか、それとも銀行預金の代替にまで広げるのかを左右する論点となる。
銀行側は、暗号資産プラットフォームが銀行類似の商品を提供するのであれば、銀行と同等の規制責任を負うべきだとして圧力を強めている。
今後の焦点は、7月上旬から中旬にかけて上院指導部が実際に本会議日程を割り当てるかどうかだ。同時に、倫理規定とマネーロンダリング対策を巡る論点を詰め、銀行委員会案と農業委員会案を一本化した審議可能なパッケージを用意できるかも問われる。
Galaxy Digitalは、こうした条件が整えば、法案が必要な票数と審議時間を確保したことを意味し得るとみている。一方で、条件が満たされなければ審議は9月以降にずれ込む可能性が高い。その場合は選挙日程と秋の立法課題が重なり、最終合意の内容が変わる、あるいは次会期へ持ち越される可能性も出てくる。
CLARITY法そのものの勢いが失われたわけではない。しかし、ワシントンの限られた審議時間とステーブルコイン規制を巡る対立のなかで、法案成立への道筋はこれまでより不透明になっている。今回の見通し引き下げは、支持の有無以上に、立法日程と個別論点の調整が成否を左右する局面に入ったことを示している。