Strategyのマイケル・セイラー会長(写真: Strategy)

JPモルガンは、暗号資産市場に対する見方を従来の強気姿勢から中立へ引き下げた。あわせて、ビットコインの最大保有企業であるStrategyについて、優先株配当の原資確保に向け、米ドル建ての手元資金を積み増す必要がある可能性があると指摘した。

Coinpostが8日(現地時間)に報じたところによると、JPモルガンは最新リポートで、Strategyが市場の信認を維持するには手元資金の拡充が重要になるとの見方を示した。

背景には、Strategyが5月末に実施した32BTCの売却がある。売却規模自体は小さいものの、市場では今後、優先株配当の支払い原資を確保するため、追加のビットコイン売却に踏み切るのではないかとの懸念が広がった。

JPモルガンは、この売却について、「必要に応じてビットコインを現金化できる」との柔軟性を株主に示す狙いがあった可能性があると評価した。一方で、結果的には投資家の不安を強めたと分析している。

Strategyの米ドル建て手元資金は約8億7100万ドル(約1310億円)。JPモルガンは、これは優先株配当の支払い余力として約6.3カ月分に相当すると試算したうえで、市場の信認回復には、配当支払い能力への懸念を和らげるための現金性資産の積み増しが必要になる可能性があるとした。

もっとも、Strategyはビットコインの積み上げ戦略そのものは維持する姿勢だ。一部売却後も、総保有量と1株当たり保有量を継続的に増やす方針を示しており、追加購入の可能性もにじませている。

JPモルガンは、現在の購入ペースが維持されれば、Strategyは2026年に約320億ドル(約4兆8000億円)相当のビットコインを追加取得できると試算した。これは、2024年と2025年の年間購入額とされる約220億ドル(約3兆3000億円)を上回る水準だという。

暗号資産市場全体への見方も慎重さを増した。JPモルガンは2月時点では、機関投資家を中心とした資金流入の拡大を根拠に強気姿勢を示していたが、今回のリポートでは市場見通しを「Neutral(中立)」へ引き下げた。

要因として挙げたのは、米国の暗号資産市場構造法案「CLARITY法案」の審議遅延、資金流入の鈍化、ビットコイン価格の弱含みだ。

JPモルガンは、年初来の暗号資産市場への資金流入額を約220億ドル(約3兆3000億円)と推計する。年率換算では約520億ドル(約7兆8000億円)となり、前年実績の半分程度にとどまるとの見方を示した。

また、機関投資家からの資金流入に加え、インフレや法定通貨価値の下落に対するヘッジ需要も、これまでより弱まっているとみている。

JPモルガンは、下半期に市場が持ち直すには2つの条件が必要だと指摘した。1つは、Strategyが年約17億ドル(約2550億円)規模とされる配当支払い計画をより明確に示すこと。もう1つは、米議会でCLARITY法案が成立することだ。

ただ、同法案が年内に可決される可能性については50%未満とみており、規制を巡る不確実性は当面続く可能性があるとしている。

アルトコイン市場に対する評価も慎重だった。JPモルガンは、DeFi(分散型金融)について、セキュリティ上の問題や期待を下回る成長を背景に、機関投資家の関心を十分に集められていないと分析した。

さらに、イーサリアムを含む主要アルトコインがビットコインを上回るパフォーマンスを示すには、実経済での利用拡大とネットワーク活動の増加が確認される必要があるとした。

JPモルガンは、Strategyのビットコイン購入戦略そのものよりも、配当原資を巡る不確実性の方を大きな変動要因とみている。規制面の進展と資金流入の回復が確認されるまでは、暗号資産市場全体に対して慎重な姿勢を維持すべきだとの見解を示した。

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