米国でデータセンターの急増が電力料金と税収を巡る議論を広げている。写真=Shutterstock

米国でデータセンター建設が急増し、電力料金や自治体財政への影響が新たな争点となっている。2025年までに許認可を得た案件がすべて稼働した場合、年間の電力使用量は最大358.8テラワット時(TWh)に達する見通しで、送配電網や発電設備の増強費用が料金に転嫁される可能性や、税制優遇に伴う税収減を巡って、住民反発と規制論が広がっている。

Business Insiderが6月7日(現地時間)、米国のデータセンターに関する許認可資料を分析したところ、対象案件の電力消費量の中央値は、テキサス州を除く各州の年間電力使用量を上回る規模だった。年間電力使用量は224.3TWhから358.8TWhに達すると推計され、前年推計から約5割増えた。

電力需要の急増は、AI需要を背景とした超大型データセンターの新増設がけん引している。推計では、40メガワット(MW)超を消費するハイパースケールデータセンターが大半を占めた。2025年だけでも、全米34州で176件の新規データセンター案件が許可され、1976年の初許可以来で年間最多となった。

案件の大型化も進む。Amazonはミシシッピ州リッジランドで14棟規模のデータセンター群を進めており、Microsoftはウィスコンシン州マウントプレザントで9棟を建設中だ。ユタ州イーグルマウンテン近郊でQTSが建設している施設は、全面稼働時の年間電力使用量が1.9TWh~3TWhに上ると見積もられており、米国の22万7000世帯分に相当する。

問題は、こうした拡張が電力網と地域社会の負担につながっている点だ。複数の分析では、データセンター需要に対応するための送配電網や発電設備の増強費が、最終的に電力料金へ転嫁されかねないと指摘している。

実際、PJM Interconnectionの域内では、データセンター需要が2026年第1四半期の卸電力コストを前年同期比76%押し上げた要因の一つとされた。PJMの独立市場監視機関であるMonitoring Analyticsは、既存および想定されるデータセンター負荷によって、利用者がすでに数十億ドル規模の追加費用を負担しているとの試算を示した。

こうした中、Big Tech各社も対応を迫られている。Amazon、Google、Meta、OpenAIは2025年末、今後のデータセンター支援に必要となる送配電網投資のコストを公平に負担する考えを表明した。Microsoftも、地域の利用者向け電力を圧迫したり料金を押し上げたりしない形でデータセンターを運営できるよう、電力会社と需要計画や電力網投資で連携していると明らかにしている。

一方で、地域住民の反発は強まっている。カンザス州セジウィック郡では、データセンターが電力料金の上昇に加え、騒音や大気汚染、農業基盤への負荷を招く可能性があるとして懸念が広がっている。地元農家のケイトリン・グルーエンバッハ氏は、データセンターが自らの生活様式を壊し、限られた資源を奪う一方で地域に還元されるものはないと訴えた。

住民はSNSや公聴会を通じて反対の声を強めており、セジウィック郡当局は5月、新規データセンター申請の審査期間を90日延長した。

州議会レベルでも対応が進む。ネブラスカ州では、新設データセンターに大型の天然ガスタービンなど自家発電設備の確保を義務付ける案が議論されている。電力料金の上昇を抑えるとともに、データセンター受け入れに伴う電力網整備の費用をBig Tech側に直接負担させる狙いがある。

税制を巡る議論も活発だ。一部の州や地方自治体はデータセンター誘致のため、大規模な税制優遇を設けてきた。オハイオ州では2025年、データセンター向け優遇措置によって税収が約16億ドル減少したと報告され、制度は最近停止された。一方、推進派はAI競争力の強化や建設雇用の創出、地方財政の拡大を期待している。Amazon、Meta、Microsoft、Alphabetは2026年に合計6000億ドル超を投じる予定で、その大半がデータセンター拡充に充てられる見通しだ。

データセンターはAI競争を支える中核インフラとして定着しつつある。ただ、電力需要の急増に伴って、コスト負担と地域社会へのしわ寄せも広がっている。Big Techが巨額投資を続ける中、今後の焦点は建設規模そのものではなく、必要な電力を誰がどう確保し、その費用を誰が負担するのかに移りつつある。

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