プライバシートークンのZcash(ZEC)がプロトコル上の脆弱性懸念を背景に24時間で36%急落した。こうした中、XRP Ledger(XRPL)のバリデーターが、開発中の非公開送金機能「XLS-0096」を、プライバシー重視のユーザーに向けた代替案として提示した。
ブロックチェーンメディアのThe Crypto Basicによると、XRPLのバリデーターであるベットはX(旧Twitter)への投稿で、Zcash利用者に対し、XRPLが開発を進めるプライバシー関連機能への移行を検討するよう呼びかけた。
発端となったのは、Zcashの急落だ。Zcashは24時間で36%超下落し、338ドルまで値を下げた。2日前には約640ドルで推移しており、短期間で大幅に下落した格好だ。
時価総額も103億6000万ドルから56億6000万ドルへ縮小した。24時間の取引高は27億ドルを超え、売りと清算が膨らんだとみられる。
直接のきっかけは、2022年に導入されたZcashの「Orchard Shielded Pool」を巡る欠陥問題だった。セキュリティ研究者のテイラー・ホーンビーは、この欠陥によって、シールドプール内で二重支払いや隠れたインフレの形で不正なZECが検知されないまま生成された可能性があると指摘した。
開発チームは緊急パッチを配布し、ハードフォークも実施した。ただ、Zcashのプライバシー設計上、修正前に実際の悪用があったかどうかを立証するのは難しい。この点が市場の不安を強めた。
市場の反応は早かった。機関投資家と個人投資家の双方が売りに動き、直近の上昇局面の直後に問題が表面化したことも下押し圧力を強めた。Zcashは今年初めにも主要開発チームの辞任を受けて急落しており、今回の問題であらためて信認が問われている。
こうした状況を受け、ベットはプライバシー重視のユーザーに対する代替先としてXRPLを挙げた。投稿では、XRPLで開発が進むプライバシーツールが選択肢になり得るとの見方を示した。
その中核となるのが「XLS-0096」だ。これはMPT向けに非公開送金機能を導入する提案で、昨年適用された「XLS-33」を土台としている。XLS-33は、RLUSDなどのステーブルコインやロイヤルティポイント、実物資産連動トークン(RWA)といった代替可能トークンの発行・管理をしやすくする枠組みを整えた。
一方、現状のXRPLでは残高や取引履歴が公開されるため、プライバシーが重視される用途には制約があった。XLS-0096はこの課題に対応するもので、残高や送金額を秘匿しつつ、総発行量や発行体の情報は検証可能な状態に保つ設計を目指す。
この仕組みには、EC-ElGamal暗号とゼロ知識証明を用いる。外部から個別の残高や送金量を確認できない一方で、システムの根幹となるルールは維持できる点が特徴とされる。
開発の方向性は、機関投資家や金融機関の需要を意識したものだ。XRPLは同機能を通じて、プライバシー、監督可能性、規制順守を両立させる構造を目指している。銀行や大規模プロジェクトなど、非公開性と透明性の双方を求める用途を想定している。
関連する議論は2025年9月中旬にXRPL標準を巡って始まった。開発には、Rippleの研究チームに所属するムラト・ゼンクやアンチャル・マルホトラらが参加している。
もっとも、「XLS-0096」はまだ開発の初期段階にある。対象はMPTに限られ、ネイティブトークンであるXRPの取引には適用されない。XRPLではこのほか、「XLS-82」に基づくMPTの分散型取引所(DEX)統合も進めている。
これらの更新は、XRPLが進める機関投資家向けDeFiとトークン化拡大戦略の一環と位置付けられる。今回の動きは、プライバシートークン市場において、技術的な信頼性と規制順守の両立が重要な論点になっていることを示している。
Zcashが欠陥問題で信頼の試練に直面する一方、XRPLは非公開送金と検証可能性の両立を掲げ、機関向けプライバシー基盤の拡充を狙う。ただ、「XLS-0096」はなお初期段階にあり、実装の可否や適用範囲、市場ニーズが今後の評価を左右しそうだ。