NYDIGは、足元のビットコインなど暗号資産市場の軟調について、単一の悪材料によるものではなく、複数の要因が重なった結果だとの見方を示した。ブロックチェーンメディアのCoinpostによると、同社のグローバルリサーチ責任者グレッグ・チポラロ氏は6月5日付の週次レポートで、相場の重荷となっている5つの要因を挙げた。
第1の要因として挙げたのは、AI分野との投資マネーの競合だ。直近18カ月でAIが株式市場やベンチャー投資、企業支出の中心テーマとして浮上し、暗号資産市場に向かう資金を吸収していると説明した。
大型IPO(新規株式公開)への期待も、流動性を圧迫する要因と位置付けた。SpaceX、OpenAI、Anthropic、Databricks、Andurilといった未上場大手の上場観測が強まるなか、機関投資家が参加資金を確保するため、既存ポジションを縮小する可能性があるとした。
米政府によるイラン関連の暗号資産差し押さえを巡る発言にも言及した。報道によると、スコット・ベッセント財務長官は、イランに関連する約10億ドル(約1500億円)規模の暗号資産を差し押さえたと発言したとされる。これを受け、市場では政府がウォレットを把握・管理できることへの警戒感が強まったという。一方で、詳細は明らかになっておらず、市場が十分に評価できる材料はなお限られていると指摘した。
Strategyによるビットコイン売却も、投資家心理の重荷になったと分析した。Strategyは先週、米証券取引委員会(SEC)への提出書類で32BTCを売却したと開示した。売却規模自体は小さいものの、2020年以降に継続的な買い手だった同社が売り手に回ったことの象徴的な意味は小さくないとした。
量子コンピューティングを巡るリスクも改めて取り上げた。Googleの研究チームが楕円曲線暗号の解読に必要な計算資源の推定値を大幅に引き下げたほか、フランスの暗号研究者も同様の性能特性を持つ回路構造を公表したという。実用段階の脅威にはなお距離があるものの、理論上の脆弱性と現実的な実現可能性の隔たりが縮まりつつあるとの認識が、不確実性を高めていると分析した。
オンチェーン指標も、足元の相場が調整局面にあるとの見方とおおむね一致した。ビットコインの高値からの下落率は52.7%で、2021〜2022年サイクルの77.6%、さらに初期3回のサイクルで記録した84〜94%と比べれば下げは浅い。MVRV比率は1.2倍、PSIPは49%、LTH-SOPRは0.95、aSOPRは1.0近辺だった。
こうした指標についてNYDIGは、投機的な過剰ポジションの解消がかなり進んだことを示唆していると評価した。その一方で、過去の主要な底値局面で見られたような、全面的な投げ売りを示すシグナルはまだ確認されていないとした。