米電動航空スタートアップのBeta Technologiesが、地域路線向け電動航空機「Alia CX300」の商用化を急いでいる。eVTOL(電動垂直離着陸機)の実用化競争が続くなか、同社はまず滑走路を使用するcTOL機を市場投入する戦略で先行を狙う。
Business Insiderが6日付で報じたところによると、Beta Technologiesは2026年中にAlia CX300を使った有償貨物運航を始める計画だ。米運輸省の実証プログラムの枠組みで運航し、2027年末までに商業運航に必要な認証取得を目指す。
Alia CX300は、滑走路で離着陸する電動航空機だ。操縦士を含め最大6人が搭乗でき、機体下部に最大5基のバッテリーパックを搭載し、約250kWhを蓄電する。理想条件では約390マイル(約628キロ)を飛行できるとしている。
機体は冗長設計を採用しており、バッテリーパックの1基に不具合が生じても飛行を継続できるという。Beta Technologiesは、こうした構造が認証取得でも強みになるとみている。
同社はすでにAir New Zealandなど主要顧客から受注を確保している。事業は段階的に拡大する計画で、まず貨物向けcTOLを商用化し、その後に旅客向けcTOL、貨物向けeVTOL、旅客向けeVTOLへと広げる方針だ。
Beta TechnologiesのCEO、カイル・クラーク氏は「貨物向けcTOL機は、すでに投入可能な段階にある」としたうえで、「次は旅客向けcTOL、その後に垂直離着陸機へ拡張する」と説明した。
このアプローチは、Joby AviationやArcher AviationがeVTOLの商用化に注力しているのとは対照的だ。Beta Technologiesは、認証のハードルが比較的低いcTOLを先に立ち上げ、技術と運航実績を積み上げる戦略を取る。
同社は、電動推進システムによる運航コストの低減効果も訴える。試験飛行を担当した操縦士のクリス・カプト氏は、実証飛行にかかった電力コストが数ドル程度だったと明らかにした。Beta Technologiesによると、ショーン・ダフィー米運輸長官が搭乗した最近の実証飛行でも、コストは約3ドルだったという。
同規模の燃料航空機では燃料費が数百ドルに達するケースもあり、それと比べると低水準だ。ただ、業界では電力費の低下がそのまま運賃の引き下げにつながるわけではないとの見方もある。操縦士の人件費や整備費、保険料、充電インフラ整備費など、運航コストはなお幅広いためだ。
バッテリーの交換費用も収益性を左右する要因となる。米証券取引委員会(SEC)への提出文書によると、機体のライフサイクル全体で最大1300万ドル(約19億5000万円)のバッテリー交換費用が発生する可能性があるという。
Beta Technologiesは、航空機販売に加えて充電インフラ事業の育成も進めている。自社開発の急速充電器は約1時間で機体を充電でき、価格は数十万ドル規模という。推進システムや充電設備などの中核技術を内製化する垂直統合戦略で、品質とコスト競争力の確保を狙う。
運航実証も進めている。Beta TechnologiesはRepublic Airways、Air New Zealand、英国のLoganairと連携し、試験飛行を実施している。Air New Zealandとは2026年初め、12空港を経由する形で7000マイル超を100回以上飛行し、運用データを蓄積した。
同社が有望視するのは、大型ジェット機の就航が難しい地域空港だ。米国には商業用大型航空機が就航していない公共空港が4000カ所以上あるとして、Alia CX300が短距離の地域路線を結び、新たな市場を開拓できると期待している。
Beta Technologiesの戦略が、電動航空分野における現実的な商用化モデルとなるかどうかに注目が集まっている。貨物輸送と地域航空で実績を積み上げ、最終的に都市航空交通(UAM)市場へ広げる構想を実現できるかが焦点となる。