BitMEX共同創業者のArthur Hayesが、公に強気姿勢を示していた複数の暗号資産を短期間で相次ぎ売却し、波紋を広げている。オンチェーン調査官のジャックXBTは、個人投資家を「出口流動性」として利用した可能性があると批判。これに対しHayesは、売却は適正な価格で行った正当な取引だと反論した。
ブロックチェーンメディア「Cryptopolitan」が6日付で伝えたところによると、ジャックXBTが問題視したのは、Hayesがこの2週間でNEAR Protocol(NEAR)、Hyperliquid(HYPE)、Zcash(ZEC)、Worldcoin(WLD)のポジションを順次解消した動きだ。
焦点となっているのは、公の場での強気発言と実際の売却タイミングの近さだ。Hayesは5月22日、HYPE、ZEC、NEARを「神聖な三位一体」と表現し、強気のポジションを構築していた。
その後、6月4日にはHYPEとNEARを全量売却した。HayesはX(旧Twitter)への投稿で、近く公表する予定のエッセー「Reality Test」で売却理由を説明すると述べた。
Hayesは当時の売却背景として、イラン紛争に伴うエネルギー価格の上昇、予定されているビッグテック3社のIPO(新規株式公開)、さらに中間選挙を前にドナルド・トランプ米大統領がAIを巡る政策姿勢を転換する可能性を挙げた。
取引ごとに一定の説明はあったものの、市場では、強気な見方を公に示して個人投資家の需要を喚起した後に売却していた点に注目が集まった。
ZECも同様の流れだった。Hayesは6月5日、Orchard Poolを巡るハッキング論争を理由に、ZECのポジションを手じまいした。
その際Hayesは、「AI、政府、ビッグテックの時代におけるプライバシーの議論には完全性が求められる」としたうえで、「今回の脆弱性がトークン発行につながった可能性は低いが、暗号学的に不可能だと公式に証明することはできない」と説明した。
問題提起がさらに広がるきっかけとなったのはWLDだ。Hayesは6月4日、Worldcoinについて、SpaceXのナスダック上場期待に賭ける取引だと位置付け、強い楽観論を示していた。
しかし、6月6日にはWLDのポジションも早々に解消した。売却理由については「チャートが誤った方向に向かっている」と説明した。ZECを手じまいした時点ではWLDの保有継続を明らかにしていたが、その表明から1日足らずで売却したことになる。
ジャックXBTは、これら4件の売却を一括して批判した。Hayesに対し、この数日間で投資家からどれほどの「出口流動性」を引き出したのかと問い、「最初はNEAR、HYPE、ZEC、今度はWLDだ」と指摘した。
要するに、公の強気発言で買いを誘った後、その需要を受ける形で自らは撤退したのではないか、という見方だ。
これに対しHayesもすぐに反論した。「私は買いたい人に適正価格で売っただけだ」と述べ、取引自体に問題はないとの立場を示した。
さらに、価格が一段と上昇していれば自分が愚か者扱いされていただろうとしたうえで、今回は自身の取引目標に沿って判断した結果にすぎないと主張した。
今回の応酬は、暗号資産市場で影響力を持つ人物の売買や発言が、個人投資家心理に大きな影響を与え得ることを改めて浮き彫りにした。Hayesは多くのフォロワーを抱えており、HYPEとNEARの清算を伝えた投稿だけでも、「いいね」は3300件超、引用投稿は536件に達した。
こうした影響力の大きさを踏まえると、ジャックXBTが指摘したパターンは、単なる損切りの是非を超えた論争へと発展しつつある。
価格動向も低迷している。WLDは6日時点で0.42ドル(約63円)で取引されており、2024年3月に付けた過去最高値11.82ドル(約1773円)から96%超下落した水準にある。
Hayesは過去にも、公の場でポジションの構築や解消を明らかにしてきた経緯がある。とりわけZECについては、長期間にわたり強気姿勢を示してきた。
次の焦点は、Hayesが予告したエッセー「Reality Test」が実際に公表されるかどうかだ。現時点では、該当する文章はまだ公開されていない。
その内容がHYPEとNEARの売却理由にとどまるのか、それともWLDとZECを含む4銘柄の一連の売買や、ジャックXBTが提起した「出口流動性」を巡る批判まで説明するのかが注目される。