米原子炉スタートアップのAntaresは6日、アイダホ国立研究所(INL)に設置した試験炉「Mark 0」が初めて臨界に達したと発表した。発電設備に接続した実証ではなく、原子炉設計の妥当性確認と安全性データの取得を目的とする試験で、米国の次世代小型原子炉開発で先行事例となる。
Ars Technicaなどによると、臨界とは、原子炉内で核分裂反応が外部からの介入なしに持続する状態を指す。原子炉開発では、設計通りに炉心が機能するかを見極める初期の重要な節目とされる。
もっとも、今回の到達がそのまま発電開始を意味するわけではない。Mark 0は発電設備と接続していない試験炉で、Antaresは電力生産ではなく、設計検証と安全性データの蓄積を主眼に据えている。
今回の進展は、米政府が進める次世代原子炉支援の流れとも重なる。トランプ政権は昨年、国内の原子力技術開発を加速する行政命令を公表し、米エネルギー省(DOE)に対し、おおむね1年以内に異なる3種類の次世代原子炉設計で臨界到達を実現する目標を示していた。Antaresは現時点で、この目標を最も早く達成した企業とみられる。
同社の原子炉で特徴的なのが、TRISO燃料の採用だ。TRISOは酸化ウラン粒子を複数の炭素層とセラミック材料で包んだ燃料で、高温耐性を備えるほか、燃料粒子そのものが放射性物質の閉じ込め機能を担うとされる。
Antaresは、原子炉本体の構造をできるだけ簡素化する一方、安全機能を燃料側に持たせる設計を採用した。これにより、炉心溶融の可能性を抑え、事故時の放射性核種の外部放出を最小限にとどめる狙いがある。
冷却・熱伝達の方式も既存原発とは異なる。原子炉で生じた熱をナトリウムで熱交換器に送り、さらに加圧窒素に移してタービンを回す閉鎖型ブレイトンサイクルを採用した。水を冷却材に使う従来の軽水炉と異なり、水を使わない熱輸送系で安全性を高める設計としている。
Mark 0を使った現在の試験の主目的は、こうした設計の検証にある。Antaresは、シミュレーションで予測した炉心内の物理条件と実測値を照合し、設計の妥当性を確認している。得られたデータは、今後の認可手続きに必要な安全性資料の整備にも活用する計画で、来年には発電システムを含む統合試験に入る予定だ。
事業化の方向性にも注目が集まる。AntaresはDOEの研究施設を活用して試験を進める一方、事業面では米国防総省の移動型原子炉開発計画「Project Pele」と密接に結び付いている。米航空宇宙局(NASA)も関連研究を支援している。
業界では、今回の成果について、商用化まではなお距離があるものの、次世代小型原子炉の開発競争における重要な前進と受け止める見方が多い。米国では、完全な認可を取得した次世代原子炉設計は1件にとどまり、建設段階まで進んだ事例はないという。
Antaresの臨界到達によって、次世代原子炉開発は研究段階から実機検証の局面へと一歩進んだ。今後は、発電を含む統合試験の結果と認可手続きの進捗が、商用化の可能性を左右する焦点となる。