写真=Shutterstock

日本政府は、医療記録や犯罪歴などの機微な個人情報を、本人の同意なしにAI開発へ活用できるようにする法改正を進めている。AI競争力の強化を狙う一方、野党は個人情報保護の後退や漏えいリスクの高まりにつながるとして反発している。

6日付のCryptopolitanによると、松本剛明デジタル相は、日本が各国に後れを取れば「AI植民地」になりかねないとの認識を示した。

松本氏は同日の記者会見で、AI開発を加速させる必要性を訴え、「多くの国民に、AI開発を引き続き進める必要性を理解してほしい。そうでなければ日本は『AI植民地』になり得る」と述べた。改正案はすでに衆議院を通過しており、今後は参議院で審議される。

今回の法改正の焦点は、AI学習に使うデータの利用範囲にある。改正案には、医療記録や犯罪歴といった機微情報を、統計目的のAI開発に活用できるようにする内容が盛り込まれている。これに対し野党は、個人情報保護の枠組みを緩め、データ漏えいのリスクを高める恐れがあると批判している。

一方、松本氏は、改正案が直ちに個人情報漏えいにつながるものではないと説明した。対象となるデータ利用は、あくまでAI開発に関する統計的な活用事例に限られるとしている。

政府が規制見直しを急ぐ背景には、米国、中国との投資規模の大きな差がある。2019~2023年のAI研究に対する国内投資額は、米国が約3290億ドル、中国が約1330億ドルだったのに対し、日本は約100億ドルにとどまった。政府は格差是正に向け、補助金制度の見直しや資金支援を進めるとともに、関連法の改正も進めてきた。

海外企業との連携も拡大している。MicrosoftとOpenAIは、日米安全保障同盟の枠組みの下で日本との協力を広げた。日本政府は、SoftBank、SAKURA internet、日本の半導体企業による国産AIモデルやコンピューティングインフラの整備も支援している。

OpenAIは5月末に来日し、サイバーセキュリティーに特化したAIシステム「GPT-5.5 Cyber」を政府と民間企業に提案した。OpenAIの取締役で、米サイバー軍の元司令官でもあるポール・ナカソネ氏は、日本当局と15の重要分野における防衛措置を協議したと明らかにした。

もっとも、日本国内では、全面的な国産AI体制の構築に懐疑的な見方も根強い。経済産業省が公的資金を投じて「日本版ChatGPT」の開発構想を示した際には、与党内からも、米中企業と競うには資源が不足しており無謀だとの声が上がった。最終的に経済産業省はこの目標を撤回した。

その代わり、政府は今夏にも基本AI計画を改定する予定だ。草案では、国家安全保障に直結するAI主権に関する条項が一段と強化される可能性がある。自民党デジタル社会推進本部内では、すべてを国産で構築するより、供給源を分散させるべきだとの主張も強まっている。塩崎彰久事務総長は先月、「最も重要なのは、特定の国や企業、提供者のいずれか一つに依存せず、自律性を確保することだ」と述べた。

こうした論点は日本に限ったものではない。欧州連合(EU)も最近、米国のテクノロジー企業への依存を減らすため、自前のクラウド、AI、半導体産業を強化する技術主権パッケージを打ち出した。日本の今回の法案審議も、AI競争力の確保と個人情報保護の両立を問う試金石となりそうだ。

キーワード

#AI #個人情報 #日本政府 #法改正 #Microsoft #OpenAI
Copyright © DigitalToday. All rights reserved. Unauthorized reproduction and redistribution are prohibited.