Googleは、AIデータセンターの電力需要拡大に備え、米東部の送電網で仮想発電所(VPP)の活用に乗り出す。自社で消費電力を直接抑えるのではなく、家庭や企業の需要を調整して電力網の余力を生み出し、データセンター向けの電力確保につなげる狙いだ。
MIT Technology Reviewが3日(現地時間)に報じたところによると、GoogleはVPPと分散型エネルギー資源のプラットフォームを手掛けるVoltusと連携し、米東部の送電網運営機関であるPJM Interconnection管内でVPP事業を進める。
このプロジェクトでは、Voltusが電気自動車(EV)やスマートサーモスタット、蓄電池などの分散型エネルギー資源を束ねてVPPを構築する。参加する家庭や企業は、電力需要が逼迫する時間帯に使用量を減らしたり、蓄えた電力を活用したりすることで報酬を受け取る仕組みだ。
Googleは整備費用を負担し、そこで生み出した追加の電力容量を同地域のデータセンター運用に振り向ける予定だ。
今回の取り組みは、ビッグテックがデータセンターの電力確保策としてVPPを活用する事例として注目を集めている。
AIの普及に伴い、データセンターの電力消費は急増しており、米国の電力網への負荷も重くなっている。業界では、需要が集中する一部の時間帯だけでもデータセンターが使用電力を抑えれば、新たな発電所建設や送電網の増強がなくても、より多くのデータセンターを受け入れられるとの見方が示されてきた。デューク大学の研究では、データセンターが年間およそ40時間だけ電力使用を抑えれば、約100GW分の新規データセンターを既存の電力網に追加接続できると試算している。
もっとも、AIデータセンターは自ら電力使用を絞り込む余地が限られる。生成AIサービスはリアルタイムの計算需要が大きく、電力使用を抑えればサービス品質の低下や売上減少につながりかねないためだ。このため近年は、データセンター事業者が自ら節電するよりも、ほかの需要家の需要応答資源を確保する手法に代替策として関心が集まっている。
Voltusは2025年、データセンター事業者が地域電力網の柔軟性資源を直接確保できる「Bring Your Own Capacity」プログラムを導入した。Googleはその初の公表顧客だという。Voltusは今回の事業を通じ、年間最大100MW規模の分散型エネルギー資源を確保できると見込む。VPPの稼働は2027年を目指す。
米国では関連制度の整備も進む。一部の州では、需要が集中する時期に使用量を減らすことを条件に、新設データセンターの送電網接続時期を早める案が検討されている。テキサス州では、非常時に大口需要家へ自家の予備電源活用や需要抑制を求める制度整備が進められた。
Googleも、データセンターの電力問題に単一の解があるとはみていない。Googleで先端エネルギー分野を統括するマイケル・テラル氏は、「電力網容量の拡大に単一の解決策はない」としたうえで、「負荷の柔軟性を含め、さまざまな選択肢を検討している」と述べた。
ただ、VPPの成否は参加規模に左右されるとの見方も強い。家庭や企業は、充電のタイミングや電力使用パターンの一部について制御を委ねる必要があり、十分な参加を得られるかが焦点となる。カリフォルニア州で実施されたEVの管理型充電プログラムに関する研究では、金銭的報酬がない場合の参加率は1%にとどまり、月40ドルの報酬を提示しても4.6%だった。
GoogleとVoltusは、現時点で具体的な報酬水準を明らかにしていない。業界では、実際の参加率と確保できる電力規模が事業の成否を左右する主要な変数になるとみている。
さらに、米調査機関Gallupの最近の世論調査では、回答者の約70%が自宅近隣でのAIデータセンター建設に反対すると答えた。データセンター拡大と電力インフラ整備を進めるうえで、地域社会の受容をどう確保するかも重要な課題として残る。