欧州連合(EU)は3日、半導体、人工知能(AI)、クラウドの域内基盤を強化する新たな「技術主権パッケージ」を公表した。米国と中国の技術企業への依存を抑え、医療やエネルギー、公共サービスなど重要インフラの主導権を欧州域内に確保するのが狙いだ。実施にはEU加盟27カ国の承認が必要となる。
CNBCによると、欧州委員会は先端半導体の生産拡大や欧州クラウド産業の育成を柱とする一連の政策を打ち出した。重要インフラが海外企業の技術やサービスに過度に依存している現状を見直し、デジタル基盤の域内主導を強める方針を鮮明にした。
背景には、欧州の対外的な技術依存の高さがある。クラウド市場は米国企業が主導し、主要なデジタルサービスでも非欧州企業への依存が大きい。米中を軸に地政学的な競争が激しさを増す中、欧州では中核技術とデータ基盤を域内の管理下に置くべきだとの議論が広がっていた。
今回の政策は、米国企業だけでなく中国製の技術やサービスへの依存低減も視野に入れる。ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員長は声明で、「病院を運営し、エネルギー網を維持し、重要なサービスを守る技術を他国に依存する余裕はない」と述べた。デジタルインフラを安全保障と戦略資産の両面から捉えるEUの姿勢を示した発言といえる。
このパッケージは、EUが進めてきたクラウド政策の流れとも重なる。EUはこれまでも、加盟国政府が機微データを扱う際に米国クラウド事業者の利用を制限する案を検討してきた。今回の提案も、重要データや公共サービスの運用で域内サプライチェーンを優先する制度設計につながる可能性がある。
半導体とAIに対する支援策も同じ方向性に基づく。EUは、先端半導体の製造能力を拡大するとともに、域内AI企業の成長基盤を強化する必要があるとみている。クラウド、AI、半導体を一体で打ち出したのは、単なる産業支援ではなく、技術主権の確立を政策の中心に据えたためだ。
EUは、中核技術を自前で確保できなければ、産業競争力だけでなく公共サービスの運営や安全保障も外部要因に左右されかねないと判断している。
市場では、政策が実施されれば、米国企業中心で形成されてきた欧州のクラウド・デジタルサービス市場の構造に少なからぬ影響を及ぼす可能性があるとの見方が出ている。とりわけ政府データの処理や公共インフラの運用で、欧州企業を優先する動きが強まるとの指摘がある。
今後の焦点は、加盟国間でどこまで合意を形成できるかと、実際にどの水準の規制や支援策を導入するかにある。EUが技術自立の旗を掲げるだけでなく、半導体の生産拡大、自前のクラウドエコシステムの育成、AI競争力の確保に向けた具体策をどこまで実行に移せるかが問われる。
専門家の間では、今回の措置を、米中を中心に再編が進む世界の技術覇権競争の中で、欧州が独自のデジタル生態系を構築するための長期戦略の一環と位置付ける見方が出ている。