ワイオミング州は、AIインフラ誘致と用水・環境・家庭向け電気料金への配慮を柱とする行政命令を打ち出した。写真=Shutterstock

米ワイオミング州は、AIデータセンターや先端コンピューティング施設の誘致に向けた行政命令を発令した。州内の許認可や審査、規制運用の基準を統一し、用水利用や環境への配慮、人材育成、家庭向け電気料金の保護を基本原則として掲げた。

ブロックチェーン関連メディアのCointelegraphによると、マーク・ゴードン知事は3日(現地時間)、大規模データセンターと先端コンピューティング開発プロジェクトに関する制度枠組みを定める行政命令に署名した。

命令名は「ワイオミング方式のデータセンター」。州政府は、許認可、審査、規制、支援、促進の各プロセスについて、関係する州機関に統一基準での運用を求めた。行政命令には、州内の大規模データセンター開発に関する許認可、審査、規制、支援、促進業務に関与する行政機関に適用すると明記している。

今回の措置では、投資誘致と地域保護の両立を打ち出した点が大きい。大規模データセンターや先端コンピューティング施設の受け入れを進める一方で、用水使用、環境の持続可能性、人材育成、家庭向け電気料金の保護を主要原則に据えた。AIインフラの拡大で電力需要の急増が見込まれる中、住民の負担と資源利用の課題を同時に管理する狙いがある。

この動きは、米連邦政府のAI推進策とも重なる。ドナルド・トランプ米大統領が国家安全保障を目的とした先端AI技術の促進に関する行政命令に署名した翌日、ワイオミング州も州レベルの実施枠組みを打ち出した。連邦政策の方向性に歩調を合わせつつ、州政府がインフラ誘致競争に乗り出した形だ。

米国ではAIインフラへの投資も拡大している。Microsoft、Amazon、Meta Platforms、Googleの親会社Alphabetの4社は、今年だけでAIとデータセンターインフラに6500億ドル超(約97兆5000億円)を投じる見通しだ。資金の多くは、法人向けクラウド市場でのシェア拡大や、大規模言語モデルの学習・運用基盤の増強に充てられるとみられている。

ワイオミング州の方針は、同州の既存産業とも結び付く。同州は豊富なエネルギー資源と企業誘致に積極的な政策を背景に、技術投資の呼び込みを進めてきた。暗号資産業界では、ビットコインのマイニング拠点としても知られる。CleanSparkは2024年、75メガワット(MW)の電力容量と連動したマイニング施設を取得し、同州での事業基盤を広げた。

こうした流れの中で、マイニング企業の事業多角化も進んでいる。2024年のビットコイン半減期以降、マイニング収益への圧力が強まるにつれ、一部企業はAIや高性能コンピューティングサービスに活路を求めている。Iren、Mara Holdings、Cipher Digital、Hut 8、Hive Digital、TeraWulfなどは、ビットコインマイニングに加え、AI関連やデータセンターのホスティング機会を広げてきた。

市場でも、こうした変化は独立した投資テーマとして捉えられ始めている。Bernsteinのアナリストは、TeraWulfとCipherのカバレッジ開始に際し、これを「新興AIインフラ」の追跡対象の一部と説明した。ワイオミング州の新たな行政命令は、こうした産業構造の変化を踏まえ、マイニング中心だった地域をAI演算インフラの拠点へと広げる制度基盤の整備に焦点を当てたものと言える。

今後の焦点は、実際にどの程度のデータセンター投資を呼び込めるかに加え、州政府が掲げた電力、用水、環境の基準が事業推進の過程でどのように適用されるかにある。ワイオミング州は、AIインフラの拡大を認めつつ、家庭向け電気料金の保護と持続可能性を前面に掲げ、責任ある形でデータセンター開発を支援する方針を示した。

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