自民党が、暗号資産ETFの容認と円建てステーブルコインの育成を柱とする政策提言をまとめた。暗号資産を制度上の投資商品として位置付けると同時に、円建てのデジタル決済基盤を整備し、アジアでの金融・決済面での存在感拡大につなげる狙いがある。
ブロックチェーン系メディアのCryptopolitanによると、自民党のブロックチェーン推進パネルは5月31日、片山さつき氏に提言書を提出した。内容は、暗号資産ETFの容認と円建てステーブルコインの育成策が中心となっている。
提言の柱は大きく2つある。1つは、日本市場で暗号資産ETFを制度上認める投資商品として位置付けること。もう1つは、円建てステーブルコインをアジア市場の決済ゲートウェイとして育てる構想だ。
自民党は暗号資産ETFについて、デジタル資産を直接保有せずに投資できる金融商品と位置付ける。個人・機関投資家が暗号資産市場にアクセスしやすい環境を整える狙いがある。
自民党のジュンチ・カンダ議員は記者団に対し、政府として円建てステーブルコインをアジア地域の決済ゲートウェイとして育成したい考えを示した。2027年5月に東京で開かれるアジア開発銀行(ADB)年次総会を、日本のブロックチェーン政策や円建てステーブルコイン戦略を国際社会に示す機会とすべきだとした。
こうした提言の背景には、ドル連動型ステーブルコインが市場の大半を占めている現状がある。ステーブルコイン市場は足元で約3150億ドル(約47兆2500億円)規模に達しており、Tether(USDT)やUSD Coin(USDC)などドル連動型が主流となっている。
各国の政策当局は、ドル建てステーブルコインが既存の銀行網を介さずに国際決済を処理し、国内金融機関の役割を弱める可能性を警戒している。日本でも、金融主権の確保をにらみ、円建てのデジタル決済インフラを整備する必要性が高まっている。
日銀も関連議論に前向きな姿勢を示している。ヒミノ・リョウゾウ副総裁は先月、グローバル通貨システムの将来を巡る議論の場で、中央銀行デジタル通貨(CBDC)と民間ステーブルコインを対立的に捉えるのではなく、併用を前提とした総合的なアプローチが必要だと強調した。
民間での取り組みも広がっている。日本のスタートアップJPYCは昨年10月、日本初のライセンスに基づく円建てステーブルコインを発行し、累計発行額は10億円を超えた。今後3年で1兆円規模への拡大を目指すとしている。
大手金融機関も実証を加速している。MUFG、SMFG、みずほフィナンシャルグループは昨年末、共同ステーブルコインプロジェクトの推進計画を公表した。
今年3月には、ブロックチェーン基盤の金融インフラ「Progmat」で、円連動型およびドル連動型ステーブルコインを用いた概念実証(PoC)を実施した。金融庁はこのプロジェクトを「決済革新プロジェクト」に指定し、制度面から支援している。
5月には別のプロジェクト「EJPY」も日本ブロックチェーン財団の承認を受けた。EJPYは3種類の信託型法的スキームを採用し、一般的な電子決済手段に適用される1取引当たり100万円の上限規制の対象外となるよう設計された。企業間決済に適した仕組みを備えるとしている。
暗号資産ETFの制度化論議も今後進む可能性がある。自民党の提言が政策に反映されれば、日本も米国や香港など、暗号資産ETFを認める市場と同様の方向に向かうことになる。
日本の内閣は4月、暗号資産を金融商品として再分類する改正草案を承認した。これまで日本の法制度では、暗号資産は主に決済手段として位置付けられてきた。再分類は、ETF制度化に向けた前提条件に近いとみられている。
もっとも、実際の立法には時間を要する見通しだ。片山氏は提言書に関して公の立場を示しておらず、法改正には委員会審査と本会議での採決が必要となる。暗号資産ETFの容認と円建てステーブルコイン拡大が、政策提言の段階から制度化へ進むかどうかが今後の焦点となる。