写真=28日、ソウル・汝矣島のTPタワーで開かれたKiwoom Securitiesの退職年金事業に関する記者懇談会で説明するオム・ジュソン代表(オ・サンヨプ撮影)

Kiwoom Securitiesは6月から退職年金事業に参入する。主力の委託売買事業で高収益を維持する一方、個人向けシェアの低下が続いており、新たな収益源の育成と顧客基盤の拡大を急ぐ。退職年金を、ブローカレッジ依存を是正する中長期の成長事業と位置付ける。

同社の2026年1〜3月期連結業績は、営業利益が6212億ウォン(約683億円)、当期純利益が4774億ウォン(約525億円)だった。前年同期比では営業利益が90.9%増、純利益が102.6%増。国内株式市場の売買代金拡大を追い風に、委託売買手数料収入が伸びた。

株式手数料収入は、国内株が2311億ウォン(約254億円)、海外株が804億ウォン(約88億円)で、合計3115億ウォン(約343億円)。1日平均約定代金は27兆8000億ウォン(約3兆600億円)と、前年同期比215.9%増となった。

もっとも、売買代金の増加がそのまま個人向けシェアの維持にはつながっていない。国内株の個人向けシェアは2025年10〜12月期の26.5%から、2026年1〜3月期は25.7%に低下した。2025年4〜6月期の29.4%と比べても、低下傾向が続いている。

同社はシェア下落の要因として、KOSDAQの取引比率の縮小、大手証券会社による店舗営業の強化、ETF売買比率の上昇を挙げる。

これまで個人投資家の比率が高いKOSDAQで強みを発揮してきたが、1〜3月期のKOSDAQ取引比率は23%台まで低下した。大型株中心の相場展開が続き、相対的な強みが薄れたという見方だ。

さらに、Toss Securitiesなどプラットフォーム系証券会社による手数料プロモーションも逆風となっている。同社は短期的な手数料競争に正面から乗り出すのではなく、ETF取引の利便性向上、ユーザー体験(UX)の改善、コミュニティ機能やAIベースのサービス拡充で差別化を図る方針を示している。

こうしたなかで打ち出したのが退職年金事業だ。6月1日から自社のモバイルトレーディングシステム(MTS)で退職年金サービスを開始する。対象は個人型退職年金(IRP)、確定拠出年金(DC)、確定給付年金(DB)で、オンライン中心で運営する計画だ。

ピョ・ヨンデ年金プラットフォーム本部長(常務)は28日の記者懇談会で、「オンライン基盤の退職年金事業者として参入する。加入者本位で、オンライン中心の市場を広げていきたい」と述べた。

退職年金市場はすでに500兆ウォン(約55兆円)を超え、今後も拡大が見込まれている。同社は2035年には1200兆ウォン(約132兆円)規模に達するとみている。積立金が銀行や保険会社から証券会社へ移る動きも出ているという。

同社は、元利金保証型中心だった市場が、ETFやファンドなど投資型商品へと軸足を移しつつあるとみる。これに伴い、オンライン投資プラットフォームとしての使い勝手が競争力を左右すると判断した。

差別化策として掲げるのは、既存の株式取引環境を退職年金に応用することだ。退職年金の利用者も、通常の株式取引に近い操作でETFを検索し、売買できるようにした。自動投資、積立投資、利息・配当の再投資、AIポートフォリオサービスも提供する。

初年度の手数料無料で顧客基盤を広げる戦略も打ち出した。DB、DC、IRPの運用管理手数料と資産管理手数料を、加入後1年間は条件なしで免除する。IRP口座には、運用成績に連動する手数料体系を導入する。

顧客の収益率が同社の定める基準を下回った場合は、手数料を免除する仕組みで、同社はこの体系について金融監督院の承認を得たとしている。

もっとも、事業立ち上げ初期は積立金の急拡大よりも安定運営を優先する考えだ。2026年の積立金目標は5000億ウォン(約550億円)以内に抑えた。一方で、長期目標としては2035年までに証券業界の退職年金市場でシェア10%、積立金残高でトップ5入りを掲げる。

焦点は、既存のブローカレッジ顧客をどこまで年金顧客へ取り込めるかにある。同社は国内株式市場で21年連続シェア首位を維持してきたとしており、投資経験の豊富な個人顧客基盤を持つ。こうした顧客が退職年金でもETFやファンドなど投資型商品を積極的に活用すれば、ブローカレッジ事業との相乗効果も期待できる。

ただ、退職年金市場は参入障壁が高い。銀行、保険会社、大手証券会社がすでに法人営業網と積立金を確保しており、後発の同社が短期間で順位を引き上げるのは容易ではない。とくにDB・DC市場では、法人営業力と長期の運営・管理能力が問われる。

同社は、店舗網を持たない弱みを、オンラインでの業務処理と法人営業のデジタル化で補う考えだ。加入、入金、積立金の運用、給付といった退職年金業務をオンラインで処理できる企業担当者向けの業務サイトを整備した。法人営業は、既存の企業金融組織と新設した退職年金組織が連携して進める。

証券業界では、今回の退職年金参入を単なる新規事業の追加ではなく、委託売買依存を引き下げるための構造転換とみる向きもある。委託売買は売買代金や投資家心理に左右されやすい半面、退職年金は積立金を基盤とする継続収益を積み上げやすいためだ。

一方で、初年度の手数料無料や収益率連動型手数料の導入により、立ち上がり段階の収益性は限られる可能性がある。同社も2026年は積立金の拡大より事業の安定化を優先するとしている。

オム・ジュソン代表は「退職年金市場は重要な転換点を迎えている。オンライン投資プラットフォームとして培った経験とIT競争力を、退職年金の資産管理にもつなげていく」と述べた。

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