Ethereum共同創業者のビタリック・ブテリン氏が、分散型ガバナンスをテーマにしたSF小説の執筆を始めた。従来の長文の技術エッセイとは異なる形で、DAOをはじめとするガバナンスの課題を物語として描く試みとして、ブロックチェーン業界の関心を集めている。
ブロックチェーンメディアのBeInCryptoが27日(現地時間)に報じたところによると、ブテリン氏はソーシャルプラットフォーム「Farcaster」で執筆開始を明らかにし、第1章と第2章を個人サイトに掲載した。ブテリン氏は「いつものようにブログ記事を書く代わりに、分散型ガバナンスを物語形式で試してみることにした」と説明している。
ブテリン氏はこれまで、DAO(分散型自律組織)や投票メカニズム、公共財の資金調達といった複雑なガバナンス上の論点を、理論中心の技術文書で発信してきた。今回は、架空の社会や危機的な状況を舞台に、ガバナンスの仕組みがどのように機能するのかを小説の形で描く構成だ。
作品では、投票参加率の低さや大口トークン保有者への権力集中、財務構造のゆがみといったDAOの構造的な限界が対立の軸として盛り込まれている。あわせて、二次投票など、同氏がこれまで提唱してきた仕組みも物語の中で再構成しているという。
こうした試みは、Ethereumエコシステムが抱える長期的なガバナンス課題とも重なる。ブテリン氏は最近、Ethereum Foundation(EF)の役割について、特定組織が中心となるのではなく、分散型エコシステムを構成する一つのノードとして捉える考えを示してきた。
今回の小説も、単なる技術提案にとどまらず、多様な利害関係者と権力構造が衝突する局面を物語として提示することで、ガバナンス設計をより立体的に考察しようとする試みとみられる。
発表の場としてFarcasterを選んだ点も注目される。分散型ソーシャルプロトコルとして知られるFarcasterを使うことで、コンテンツの発信や流通そのものを中央集権型プラットフォームではなく、分散ネットワーク上で行うというメッセージも込められているとの見方がある。
このため今回の取り組みは、単なる表現形式の変更ではなく、技術思想とコミュニケーション手法の両面にまたがる選択として受け止められている。
現時点で、このプロジェクトが完成した長編小説へ発展するのか、公開実験の段階にとどまるのかは明らかになっていない。ただ、Ethereumエコシステムで最も注目度の高い人物の一人であるブテリン氏が、ガバナンスを語る方法そのものを変えつつある兆候として注目を集めている。
今後公開される続編が、技術的な問題提起をさらに深めるのか、それとも物語として新たな読者層を取り込むのかも焦点となりそうだ。