豪州の中小企業15社を対象に、賃金を維持したまま労働時間を80%に減らす週4日制を調査したところ、生産性が低下したとする回答はなかった。43%の企業は生産性が向上したと答え、残る57%もほぼ変化がなかった。
この調査は、豪州で比較的早い時期に週4日制を試験導入した中小企業15社のリーダーに聞き取りを行い、制度の効果と課題を検証したもの。対象業種は物流、ソフトウェア開発、出版などにまたがる。
研究チームは、ディーキン大学とスウィンバーン工科大学の研究者らで、成果を学術誌「Humanities and Social Sciences Communications」に発表した。
調査の軸となったのは「100:80:100」モデルだ。賃金は100%を維持しつつ、労働時間を80%に減らし、生産性は100%の維持を目指す枠組みを指す。
研究では、勤務日を1日減らしても、労働強度がそのまま25%上がるわけではないと指摘した。企業側は長時間の会議を減らし、非効率な業務プロセスを見直すことで、生産性の維持につなげたという。
生産性については、43%が「向上した」と回答し、57%が「ほとんど変わらない」とした。生産性の低下を報告した企業はなかった。
制度の定着には、経営側と従業員の双方の関与が欠かせないと研究チームは分析した。経営側が導入の目的を明確に示す一方、従業員も自ら働き方を調整する必要があるとしている。
論文で「100:80:100モデル」を前面に出したのも、週4日制がこうした前提の下で成り立つ仕組みであることを示すためだという。
背景には、豪州の労働環境の変化もある。豪州は比較的労働環境が整った国とみられる一方、デジタル化の進展によって仕事と私生活の境界が曖昧になり、労働者の61%がバーンアウトを経験したとされる。
こうした状況を受け、週4日制は勤務日と休日の線引きを改めて明確にする選択肢として検討された。
実際、現場では勤務時間外に仕事を持ち込むケースが減り、従業員の生活の質も改善したという。調査対象15社のうち14社が試験運用後も同モデルを継続した。
制度を中止した1社は、従業員2人の超小規模企業だった。新型コロナウイルスの影響に加え、会社方針の転換時期が重なったことが理由とされた。
今回の結果は、週4日制が単なる福利厚生の拡充ではなく、業務の進め方の再設計と一体で進める必要があることを示している。特に、ソフトウェア開発のような知識労働中心の業種に限らず、物流や出版でも同様の傾向が確認された点は注目される。
週4日制を巡る議論は、単純な労働時間の短縮から、会議や協業、業務手順をどう減らし、どう見直すかへと焦点が移る可能性がある。