中国の人工知能(AI)企業DeepSeekで、低価格API戦略を支える基盤として演算・メモリー効率の高さが注目されている。無料モデルの公開を続ける一方で、約700億元規模の資金調達協議も進めており、収益性を左右する要素としてモデル設計の効率性に関心が集まっている。
26日(現地時間)、オンラインメディアGigazineによると、DeepSeekは現在、約700億元規模の投資誘致に向けた協議を進めている。
DeepSeekは2025年1月に公開した「DeepSeek-R1」で世界のAI業界の注目を集めた。当時、このモデルはOpenAIの推論モデル「o1」と同水準の性能を実現したとの評価を受けた。
続いて今年5月に公開された「DeepSeek-V4-Pro」は、米政府傘下のAI標準化・イノベーション機関CAISIからGPT-5級の性能と評価された。一方で、米国の最先端モデルと比べると約8カ月の差があるとの見方も出ている。
市場が注目するのは、こうした性能に加えて価格戦略だ。DeepSeekは当初期間限定だったAPIの75%値引きを事実上恒常化した。同等クラスのモデルと比べて大幅に低い価格設定が競争力になっている。
中国ではAlibabaやZ.aiも、先端モデルの無料公開の流れに加わっている。ただ、両社はエージェントシステムの構築など、比較的明確な収益化戦略を打ち出しているとされる。これに対しDeepSeekは、収益モデルがなお見えにくい中でも巨額投資の協議を進めている。
その背景について、AIアナリストのGDPは「圧倒的な効率性」を挙げた。大規模言語モデル(LLM)は、計算結果を保存して再利用するKVキャッシュ構造を採用するが、DeepSeekはこの設計を通じてメモリー使用量を大きく抑えたという。
実際、100万トークン入力時のメモリー使用量は、GLM-5が60GB、Qwen3-235B-A22Bが89GBだったのに対し、DeepSeek-V4は5.48GBにとどまったと分析された。
この差は単なる技術比較にとどまらず、コスト構造にも直結する。AI産業ではメモリー価格の上昇が重荷となっており、報道によればAIチップ関連コストの約63%をメモリーが占める。環境によっては、GPUよりメモリーの負担が大きくなるケースもあるという。
こうした状況下で、DeepSeekの高効率な構造はモデル運用コストを大幅に引き下げ、採算性を支える基盤になり得るとの見方が出ている。
推論速度の面でも効率性が強みとされる。DeepSeekはキャッシュ活用の構造を最適化し、性能が見劣りするAIチップでも遅延を抑えられるとの評価がある。
報道では、「DeepSeek-V4-Pro」は前世代モデルの約3.7分の1の演算量で動作し、「DeepSeek-V4-Flash」は約9.8分の1の演算量で処理できるとされた。
こうした戦略は、中国のAI産業が直面する現実とも重なる。中国企業は米国の輸出規制によって、NVIDIAの最新高性能AIチップの確保に制約を受けている。相対的に低性能なチップでも高性能AIサービスを実現できれば、コスト削減に加え、サプライチェーンの安定という面でも優位性を持ちうる。
市場では、DeepSeekによる700億元調達は単なるモデル開発資金にとどまらず、より長期の戦略と結び付くとの分析も出ている。GDPは、この資金が中国のメモリー企業やAIチップ企業に再投資され、「コスト効率型AIエコシステム」の構築に使われる可能性があると見通した。
無料モデル公開と低価格APIで市場シェアを押さえ、実際の収益性は高効率なモデル設計と中国国内のハードウェア供給網の整備で確保する。市場では、DeepSeekがそうした構図を描いているとの見方が広がっている。
こうした戦略が現実味を帯びれば、中国AI企業は単なる価格競争を超え、世界のAI産業における新たな選択肢として台頭する可能性がある。