ビッグテック各社のAI投資を巡り、投資先スタートアップのクラウド利用が自社売上として戻る「還流構造」への警戒感が強まっている。投資と売上が相互に膨らむことで成長率は押し上げられる一方、収益の質やキャッシュ創出力の実態を見極める必要があるとの見方が浮上している。
BeInCryptoは5月25日(現地時間)、Microsoft、Amazon、Google、Oracleといった大手テック企業の今後のクラウド契約の大部分が、OpenAIやAnthropicなど一部のAIスタートアップに集中していると報じた。
問題視されているのは、ビッグテックがAI企業に投じた資金が、同じ企業のクラウド利用料として再び戻ってくる構図だ。外部需要の拡大というより、投資資金が売上として還流する形になっており、成長の見え方を実態以上に押し上げている可能性があるという。
代表例として挙げられるのがMicrosoftとOpenAIの関係だ。MicrosoftはこれまでOpenAIに約130億ドル(約1兆9500億円)を投資し、その大部分をAzureのクラウドクレジットとして提供したとされる。OpenAIはこれをAIモデルの学習や運用に充て、Microsoftはその利用分を売上として計上した。
焦点となるのは、売上成長と実際の採算性の乖離だ。報道によれば、OpenAIの年間クラウド費用は600億ドル(約9兆円)を超える一方、実売上は約250億ドル(約3兆7500億円)規模にとどまるとされた。投資と売上が連動することで見かけ上の成長は維持できても、持続的なキャッシュ創出につながるかどうかは不透明だ。
AmazonとAnthropicの関係も同様の事例として取り上げられた。Anthropicは直近9カ月でAmazon Web Services(AWS)に約26億6000万ドル(約3990億円)を支出したとされ、その規模は同社全体の収益にほぼ匹敵すると分析された。アナリストの1人は、AIブーム全体が「架空の売上」の上に成り立っている可能性があると指摘した。
こうした構造は、企業業績の見え方にも影響する。AIスタートアップが新たな資金調達ラウンドを実施するたびに、出資企業は保有持ち分を再評価し、その評価益を純利益に反映できるためだ。Alphabetは2026年1~3月期の純利益626億ドル(約9兆3900億円)のうち、約287億ドル(約4兆3050億円)がAnthropic持ち分の再評価によるものだったと開示した。Amazonについても、同期間の純利益303億ドル(約4兆5450億円)のうち、約168億ドル(約2兆5200億円)が同様の評価益に関連したと伝えられた。
一方、キャッシュフローは弱含んでいる。Amazonのフリーキャッシュフロー(FCF)は前年同期比95%減の12億ドル(約1800億円)にとどまった。同期間には、データセンター建設などの物理インフラに442億ドル(約6兆6300億円)を投じており、巨額のAI投資に対して実際の資金創出力が追いついていないとの指摘が出ている。
クラウド事業の特定顧客依存も高まっている。Microsoftは将来の受注残6270億ドル(約94兆500億円)のうち約49%がOpenAI関連と分析された。Oracleについても、案件パイプラインの54%を単一顧客に依存していると報じられた。
加えて、AIの導入後に運用コストが急増している点も不安材料だ。Uberはエンジニア向けにAnthropicの「Claude Code」とCursorを提供した後、2026年のAIコーディング予算の大半を4月までに使い切ったとされる。一部社員の月間API利用料は500ドル(約7万5000円)から最大2000ドル(約30万円)に達したという。Microsoftも、数十億ドル規模のAnthropicとの協業とは別に、社内でのClaude Code利用を中止したと言及された。
Nvidiaの応用ディープラーニング部門バイスプレジデント、ブライアン・カタンザロ氏も、「われわれのチームでは人件費よりコンピュートコストの方がはるかに大きい」と述べ、AI運用費の重さを認めた。業界では、半導体価格が下がってもエージェント型AIの利用拡大で総支出は増え続ける可能性が高いとみられている。
市場の関心は、単純な成長率から、AI事業が自力で費用を賄えるかどうかへ移りつつある。あるアナリストは「AIを実際に大規模利用する先行企業でさえ、コストを吸収できない事態が起きている」と指摘した。
影響は暗号資産市場にも及ぶ可能性がある。報道によると、ビットコインのNASDAQとの相関係数は2026年1月時点で0.75と高水準だった。NvidiaやOpenAIを軸としたAI投資の流れが揺らげば、デジタル資産市場全体に波及する恐れがあるとの見方も出ている。
主流の金融機関も、AIバブルの可能性を点検し始めている。Fidelityは最近、AIバブルを見極める重要指標として5項目を提示し、ビッグテックの利益の質や設備投資の負担余力にはすでに警戒サインが出ていると評価した。