CLARITY Actの審議は難航する可能性が出ている。写真=Shutterstock

米銀行業界が、ステーブルコインの利回り付与を一部認める妥協案に正式に反対し、暗号資産市場構造法案「CLARITY Act」の審議に遅れが生じる可能性が強まっている。TD Cowenは、銀行業界の反発を受け、法案審議が6月にずれ込む可能性があるとみている。

The Blockが5日(現地時間)に報じたところによると、焦点となっているのは、ステーブルコインに預金金利に近い利回りを直接付与することは禁じる一方、決済や取引に伴う利用者向けリワードは一部認める妥協案だ。共和党のトム・ティリス上院議員と民主党のアンジェラ・オルスブルックス上院議員が2日に提示した。

ただ、Bank Policy Institute、Financial Services Forum、Independent Community Bankers of America、Consumer Bankers Association、American Bankers Associationなど、大手・中小の銀行団体は5日、この案では不十分だとして反対を表明した。

TD Cowenのジャレット・セイバーグ氏(ワシントン・リサーチ・グループ専務)は、大手行と地域銀行が足並みをそろえて反対している点が重要だと指摘した。そのうえで、今回の対立で銀行業界の共同歩調が影響力を増しており、暗号資産業界の一方的な勝利とは言い切れないとの見方を示した。

セイバーグ氏は、両陣営を同時に納得させる解決策は見当たらないとも述べた。主要な暗号資産プラットフォームは、個人投資家の流動性を自社ウォレット内にとどめるため、継続的な利回り付与を求めている。一方、銀行業界にとっては受け入れがたい内容だという。TD Cowenはこの対立について、「落としどころが見えない」と評価した。

立法日程も切迫している。セイバーグ氏は、今回の摩擦を受けて法案修正を巡る審議が6月に先送りされる可能性があるとみる。7月末までに上院採決に持ち込むには、6月末までに上院銀行委員会を通過する必要があるという。

メモリアルデーの休会日程を踏まえると、実質的な審議日程は限られる。セイバーグ氏は、8月の議会休会前が法案処理の事実上の期限との見方を維持している。

市場や業界関係者の間では、今後2週間が重要局面になるとの見方も出ている。Rippleのブラッド・ガーリングハウスCEOは5日、暗号資産関連法案にとって今後2週間が決定的になると述べた。

同氏は、今回成立に至らなければ中間選挙日程が本格化し、法案成立の可能性は大きく低下すると指摘した。秋の選挙後には、再び議論が進む可能性も一段と低くなるとみている。

不透明要因は、ステーブルコインの利回り問題にとどまらない。セイバーグ氏はここ数週間、商品先物取引委員会(CFTC)の委員欠員、ドナルド・トランプ米大統領と関係する暗号資産プロジェクト「World Liberty Financial(WLFI)」を巡る利益相反問題、イランによる暗号資産決済活用への懸念などを懸案として挙げてきた。

さらに、ティリス上院議員がCLARITY Actへの倫理条項追加を求めており、新たな障害になっている。同議員は上院銀行委員会に所属しており、該当条項が盛り込まれなければ法案に反対する可能性を示している。

規制面では、銀行業界寄りの枠組みになる可能性があるとの見方もある。セイバーグ氏は、GENIUS法案に基づいて通貨監督庁が策定する規則により、ステーブルコインの利回り付与の大半が制限される可能性があるとみている。

法的紛争に発展する余地はあるものの、CLARITY Actが成立しなければ、銀行業界はこうした規制枠組みをテコに対応できるというのが同氏の見立てだ。

TD Cowenは、CLARITY Actの年内成立について引き続き慎重な見方を崩していない。セイバーグ氏は、上院で60票の賛成を確保するには超党派の妥協に加え、トランプ氏の直接関与が必要になる可能性があるとしている。

TD Cowenは3月時点で、年内成立の可能性を3分の1程度とみていた。障害が解消されなければ法案処理は2027年に持ち越され、最終規則の施行は2029年になる可能性もあると予測している。

今回の争点は、ステーブルコインの利回り付与をどこまで認めるかにある。銀行業界と暗号資産プラットフォームの利害が正面からぶつかるなか、CLARITY Actの審議の行方が業界の勢力図を左右する局面に入っている。

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