Teslaの完全自動運転ソフトウエア「FSD」が、オランダ当局の承認を得て欧州市場展開に向けて前進した。Teslaはこの承認を基にEU全域への適用を提案する方針だが、安全基準や名称表示を巡っては一部加盟国が慎重姿勢を崩しておらず、最終承認の行方はなお不透明だ。
米Ars Technicaが5日(現地時間)に報じたところによると、オランダ車両当局(RDW)は18カ月にわたる検証を経て、TeslaのFSDについて国内の公道での使用を承認した。RDWは今後、この承認をEU全域に拡大適用するよう提案する計画という。
今回の承認は、Teslaにとって欧州市場を開く重要な節目となる可能性がある。イーロン・マスクCEOは報酬契約の条件達成に向け、今後10年で1000万人の契約者確保を求められており、約4億5000万人の潜在顧客を抱える欧州市場の開拓は大きな意味を持つ。
EU全体での承認には、加盟27カ国のうち15カ国の賛成が必要とされる。関連委員会では、早ければ7月または10月に採決が行われる見通しだ。
欧州向けのFSDは、米国版より保守的な走行仕様を採用し、ドライバー監視も強化した。米国では高速道路でハンズフリー走行が認められているが、欧州で承認対象となる仕様では、ドライバーが直ちにハンドル操作に戻れる状態を維持することが求められる。サモン機能や複雑な都市部走行機能は現時点で対象外とされる。
RDWは、160万キロメートル超の走行データと大量の関連書類を基に、適切な条件下で使用される限りシステムは安全だと判断した。ただ、他の加盟国では慎重な見方が根強い。
ロイターが入手した電子メールによると、スウェーデンやフィンランドなど北欧諸国は、Teslaの技術やマーケティング手法に強い疑念を示している。スウェーデンの関係者は、システムが制限速度超過を行うよう設計されている点に驚きを示したうえで、「FSD」という名称は消費者に誤解を与える恐れが大きいと指摘した。
フィンランド側も、凍結路面でのハンズフリー走行の安全性や、大型野生動物との衝突への対応能力に懸念を示した。Teslaによる積極的なロビー活動に対する警戒感もにじませた。
Teslaはオランダの判断を足掛かりに他国の同調を促しているが、事前の市場承認を重視する欧州の規制環境の壁はなお高い。北米市場だけではマスク氏が掲げる大きな収益目標の達成は難しいとみられるなか、欧州当局との摩擦をどこまで解消できるかが、今後の成長戦略を左右する要素となりそうだ。
企業の自主性を重視する米国と異なり、欧州は厳格な安全検証を求める姿勢を取る。こうした規制哲学の違いが採決結果にどう影響するのか、市場の関心が集まっている。